ダミール ドマは2006年に若干25歳でブランドを設立。2008年春夏シーズンよりメンズコレクションをパリコレクションで発表、2010年3月には初のレディースコレクションをパリファッションウィークで発表した。カジュアルラインのサイレント ダミール ドマ(SILENT DAMIR DOMA)も展開している。
「私のコレクションは、いつ自分自身のルーツやマルチカルチャーなバックグラウンドが自然に反映されています。今季はそこに様々な文化の要素をミックスし、ローマ帝国時代やアフリカの文化、そしてアジアや西洋の影響が融合を見せています」
レディースはさらにこのアイディアをより高度なレベルまで追求し、繊細に仕上げられた。
「異なる文化や時代のテイストをより自由にミックスし、例えばこの白いプリーツの襟はルネッサンス風。一方でカッティングはクリーンでモダンな雰囲気です。流れるようなフェミニンなラインと、テーラードによるボリューム感という相反するイメージのコントラストが、メンズに比べてより強調されています」
さらに、今季はスポーティーなモチーフがデザインのエッセンスとして取り入れられている。
「このトップスは野球のキャッチャーのプロテクターをイメージしています。ショーで使ったヘッドピースは古いハンドメイドのキャップなのですが、角度を変えてかぶることでエレガントなハットのように見えます。パンツやスカートの太いステッチも野球のグローブをイメージしています。ジッパーなどの金具も機能的でスポーティーな印象ですが、ジュエリーみたいに美しさがあります。このルネッサンス風の襟に、ちょっと着物みたいなプリーツのベスト。それにテーラードジャケット。様々な文化をコラージュでコレクションが出来上がっています」
多くのブランドが個性を発揮し、しのぎをけずるファッション業界において、独特な魅力を放つダミールの世界観。これはどうやって確立されていったのだろう。ダミールは、シーズンのスタート時期を最も重要だと語る。
「今季はたくさんの写真や絵画のリサーチから始めました。ですが、具体的なテーマではなく、空間とか、流れとか、においとか、音などその時代やスタイルにおける感覚をについて深くリサーチして、それを再構築します。それは例えば、ルネッサンスのフィーリングを私の独自の解釈によるアイディアに落とし込むという作業です。そのようにしてシーズンごとのイメージを創り出します」
「メンズ、レディース、サイレントと3つもラインがありますから、ワンシーズンの間に本当にたくさんのことをやらなければいけません。だからこそ、それぞれのシーズンの明確なフレームワークをきちんと最初に作ることが大切なのです。そして、そのイメージをブランドごとに視点を変えて展開しています。サイレントはスポーティーでカジュアル、メンズは洗練されていて、レディースはさらに洗練されてシックなムードになっています」