映画監督・是枝裕和15作目となる長編映画『La Vérité(仏題・仮)』の製作が決定。公開は2019年を予定している。
第71回カンヌ国際映画祭において、2018年6月公開の映画『万引き家族』で最高賞のパルムドールを受賞したことが記憶に新しい是枝裕和。そんな是枝監督の最新作は、フランスの至宝であり、世界的大女優であるカトリーヌ・ドヌーヴを主演に迎えた日仏合作映画。
ストーリーはフランスを舞台に、カトリーヌ・ドヌーヴ演じる女優の「母」と、ジュリエット・ビノシュ演じる女優にならなかった「娘」、長くに渡って関係性が断絶してしまっている2人を軸に、力強く情感豊かな家族の葛藤の物語を描くという。
また共演陣にも、『イングリッシュ・ペイシェント』(96)でアカデミー賞助演女優賞を受賞、また世界三大映画祭の全ての女優賞を獲得しているジュリエット・ビノシュ、リチャード・リンクレイター監督によるアカデミー賞作品『6才のボクが、大人になるまで。』(14)のイーサン・ホーク、フランソワ・オゾン監督『スイミング・プール』(03)のリュディヴィーヌ・サニエと、豪華キャストの出演が決定している。
■カトリーヌ・ドヌーヴ
ここ数年、是枝監督の映画を観て、そしてパリ、カンヌ、東京でもお会いする機会がありました。賞賛の気持ちをお伝えすることはできたのですが、まさか私たちが一緒に映画を作れる日が来るなんて想像もしていませんでした。一緒に映画を作れる…それもフランスを舞台に!魅力に溢れ、ユーモアと同時に残酷さを備えた素晴らしい脚本です。言語の壁については、恐れるよりも私はむしろ好奇心をそそられます。それがもう一つの挑戦になるだろうと知りつつも、是枝監督と一緒に仕事をするのがたいへん楽しみです。
■是枝裕和
役者とはいったいどんな存在なのだろう。役を生きている時、演技で泣いている時、笑っている時、役者本人の存在と感情はどこにあるのだろう。そんな素朴な疑問から書き始めた脚本でした。
今から15年程前に、『クローク』というタイトルで劇場の楽屋だけを舞台にした一幕もののお芝居を書き始めたのがスタートでした。しかし、この時は残念ながら力不足で脚本は完成しませんでした。2011年に、以前から親交のあったジュリエット・ビノシュさんが来日し、対談させていただいた折に、「何か将来的に一緒に映画を」と意気投合しました。企画のキャッチボールをしていくプロセスで、引き出しの奥に眠らせておいたこの企画が再浮上し、フランスを舞台に書き直してみることにしました。その時にこの物語を、女優の母と女優にならなかった娘の話にしてみようというアイデアが生まれました。
カトリーヌ・ドヌーヴさんは、自作のフランス公開時にお会いしたことがありました。自分にとっては、フランス映画のアイコンのような存在ですが、せっかくフランスで撮影するのなら、と思い切ってオファーをさせて頂きました。映画について、演じることについて、ドヌーヴさん本人にヒアリングを重ねながら、今脚本を執筆中です。今回は言語や文化の違いを乗り越えて監督するという、刺激的なチャレンジになりますが、本物の「役者たち」に正面から向き合ってみたいと思っています。
───ねえ、ママ。教えて。人生って楽しい?───
母はフランス映画のスター女優。今の恋人、元夫、パーソナルアシスタント...彼女を愛してやまない男たちの上に君臨する。そんな彼女の自伝の出版を機に、娘がアメリカから、夫と幼い子どもを連れて帰省する。しかし、母と娘の再会は、たちまち対立へと変容。さまざまな真実は露わになり、愛と恨みは告白される。
母は、SF映画に出演することになるが、自伝に自分の名前がないことに傷ついたパーソナルアシスタントが突然辞めてしまい、娘が代わりに撮影現場に付き添うことに。その現場で出会った新進女優の姿に、母はかつて親友でライバルだった今は亡き女優の面影を重ねていく。母と娘は長年に渡ってへだてられてしまったふたりの関係を果たして修復出来るのだろうか…。
母(カトリーヌ・ドヌーヴ)・・・仏映画界屈指の大女優。そろそろ第一線を退く時期だが、本人は老いを認めたくない。
娘(ジュリエット・ビノシュ)・・・元女優志望の脚本家。拠点をアメリカに構え、夫と娘をもつ。
娘の夫(イーサン・ホーク)・・・アメリカで主にテレビ俳優の仕事に就いている。
女優(リュディヴィーヌ・サニエ)・・・母が出演するSF映画の共演者。
『La Vérité(仏題・仮)』※邦題未定
公開時期:2019年
原案・監督・脚本 是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ
撮影:エリック・ゴーティエ『モーターサイクル・ダイアリーズ』(03)『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』(14)