オートクチュールという言葉は、一般的にはパリの高級注文服業界でつくられる服のことを指す。
オートクチュール以前のファッション業界の仕組みは、現在とは大きく異なるもので、すべてが分業されていた。もちろん現在でも様々な企業があり、分業されているが洋服においては既製服が中心。当時はテキスタイル(生地)のメーカー、アクセサリー・装飾品を取り扱うメーカー、仕立屋(デザインをするクチュリエ、ドレスメーカー)、縫製担当者が別々に存在していたのだ。
カスタマー(注文者)は自身で、生地を買い、装飾品を集め、そのパーツを仕立屋に持っていき、仕立屋が注文者の体に合わせてデザインし、最後の縫製は仕立屋とは別に存在する針子が請け負うシステムだった。当時のギルド制が背景としてこのような仕組みとなった。
そして当時のファッションの最大の価値やステータスは、テキスタイル(生地)にあり、デザイン面に関してはそれほどステータスが高くなかったと言われている。
オートクチュールのシステムを作ったのはイギリス人のシャルル・フレデリック・ウォルト。彼は1860年代、ナポレオン3世時代の皇室ご用達のクチュリエ(ドレスメーカー)として名を上げる。
従来のファッション業界のシステムは非効率だと考えていたウォルトは、ファッション業界のシステムを変えてしまう。その新しいシステムこそがオートクチュールの源流。
それはデザイナーが複数の服のサンプル(モデル)を用意し、モデルに着せて見せ、それを顧客が選択し、自分の体のサイズに合わせて作るというものです。デザイナーはテキスタイルの選定、デザイン、仕上がりの見直しまで一貫して管理する立場となった。
これにより、顧客に服が届くまでの時間が短縮、生産システムが効率的になり、より多くの顧客にウォルトの服を届けることが可能となり、この生産システムの元にオートクチュールは生まれた。
ウォルトは、顧客同士が同じ服を同じ場所で着ないように、顧客の住む場所、服を着ていく場所など、すべて顧客の情報を管理し、ウォルトの服を供給していたと言われている。
ウォルトのようなクチュリエの登場には1つの時代背景がある。
1870年のナポレオン三世の帝政崩壊後、これまでの皇室中心のファッションスタイルは崩れたが、ブルジョワジー(裕福層)、アメリカの富豪を中心とした、ファッションへと移行。シャルル・フレデリック・ウォルトは帝政の崩壊で、一度はビジネスをクローズするものの、裕福層を顧客につけ、再度栄華を極める。
帝政の崩壊はファッションの道を切り開くことに繋がった。これまでファッション業界で絶対的な権力ち、ある種のトレンド、美学をつくってきた、皇帝がいなくなり、絶対的なものがなくなったからだ。ファッションデザイナーは「皇室の服(すなわちその時代のトレンド)を作っている人」から「自身がトレンドを作る人」になったのだ。
ウォルトなど優れたクチュリエの服を着ることが、ステータス、トレンドとなり、デザイナーという職業が生まれ、ファッション(トレンド)を作るものが「着るもの(皇室)」から「作るもの(デザイナー)」に代わったのだ
。
フランス・クチュール組合(The Chambre Syndicale De La Confection Et De La Couture Pour Dames Et Fillettes)」が1868年に創設。これが現在のパリ・クチュール組合の基礎と呼ばれている。1946年オートクチュール組合に所属しているメゾンの数は、約100あったとされる。それが50年代前半には約60にまで、90年代にはとうとう18メゾンにまで減少した。これはオートクチュールと既製服の関連、ニーズなどの反映と見てもよいだろう。
■サンディカ正式加盟店のリスト
シャネル(CHANEL)
クリスチャン ディオール(Christian Dior)
ジバンシィ(Givenchy)
ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)
フランクソルビエ
アドリーヌ アンドレ
メゾン マルジェラ(Maison Margiela)
ステファン ローラン(Stephane Rolland)
スキャパレリ(SCHIAPARELLI)
アレクシ・マビーユ(ALEXIS MABILLE)
アレクサンドル ボーティエ(Alexandre Vauthier)
■オートクチュール組合に、正式加盟はしていないものの、準会員的にオートクチュール期間中にコレクションを発表しているブランド。
エリー サーブ(Elie Saab)
ジョルジオ アルマーニ(Giorgio Armani)
ヴァレンティノ(VALENTINO)
アン ヴァレリー アッシュ(Anne Valerie Hash)
ヴィクター&ロルフ(VIKTOR & ROLF)
■過去正式加盟していたブランドあるいは、過去ゲスト参加したブランド
エイメリック・フランソワ
ミラショーン(Mila Schoen)
ドミニクシロー
クリスチャン ラクロワ(Christian Lacroix)
イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)
クレージュ(courrèges)
ギ ラロッシュ(Guy Laroche)
ジャン パトゥ(Jean Patou)
ニナ リッチ(NINA RICCI)
森英恵(ハナエモリ)(HANAE MORI)
バレンシアガ(BALENCIAGA)
ピエール カルダン(Pierre Cardin)
ランバン(LANVIN)
トレント
ジャンルイ シェレル(JEAN-LOUIS SCHERRER)