リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)は、2019-20年秋冬コレクションを発表した。
魔女のための衣服を製作した前シーズンの「For witches」に続き、魔女に焦点を当てた今季。「Who is the witches ? Who are the witch」と題したコレクションのキーワードとなるのは、「魔女裁判」と「反転」だ。
例えば、タロットカードの“吊された男”が向きによっては処刑されているようにも、のんきに踊っているようにも見えるように、物事を「反転」させることで、相対する概念が実は背中合わせであることが浮き彫りになる。だから、「魔女裁判」によって、集団の一義的な価値観の中で「魔女」だと吊るし上げられたとしても、価値観が揺らぎ、反転すればその事実も覆されるのだ。
このコレクションでデザイナー・山縣良和が提示するのは、加害者と被害者、傍観者と当事者、光と影、白と黒、美と醜、男と女など、相対するもの同士の概念の危うさ。いつでも反転しうる、不安定さをはっきりと示した上で、価値観に縛られない、新たな人間性と異次元の空間を模索していく。
コレクションを彩るのは、二面性を象徴する白と黒。ふんわりとしたボリューム感のある袖に仕立てたコートや、丸いフォルムで後ろが開く形のケープ、複雑な切り替えを施し、様々な着方ができるケープ、ギャザーを寄せた付け衿などは、1着1着の構造の複雑性もアーティスティックだが、組み合わせて着用することで、より一層現実から浮遊したような、幻想的なムードが強調される。
ギャザーやフリルを多用したコートやドレスは、その柔らかさから無垢で清らかな少女性を思わせるが、それと同時に、布地を重ね、寄せ集めてうねるような形に仕立てられているようにも見え、長い時の流れを身にまとう老婆の存在も想起させる。
素材は、艶やかなシルク、優雅な植物柄の和紙、温かみを感じるコットンとヘンプのキルティング地などを使用。また、フロッキー模様のドレスや、極端に大きなチャイナボタンのコート、ホールガーメントのニット、サイドのリボンを結んで履くパンツ等、有機的で血の通ったクリエーションが見て取れた。
©photography by Yuji Hamada