A.P.C.(アー・ペー・セー)不動の人気ともいえるデニムパンツ。フランスのファッションブランドのデニムでありながら、ジーンズ発祥のアメリカンブランドと並んで、デニム愛好家たちに長年愛され続けている。
その青みを楽しむため、あまり洗わずオリジナルのインディゴカラーを楽しむ“生デニム”派。長い時間をかけてデニムを履き込み美しい風合いを楽しむ“デニム育成”派。どちらのジーンズファンもうならせるA.P.C.デニムの魅力とは?
A.P.C.デニムはシンプル。ブランドの顔ともいえるA.P.C.ロゴも、一目でA.P.C.だとわかってしまうアイコニックなデザインもない。多くのジーンズメーカーがヒップ部分に施している革パッチや紙パッチも付属せず、正面から見てもバックスタイルから見ても、どの角度から切り取っても無駄がない。
しかし、この“潔いシンプルさ”こそA.P.C.デニムの個性。他のジーンズメーカーとは一線を画す、クリーンなデザインが特徴だ。
唯一A.P.C.のロゴが刻まれているのは、フロントボタンとリベット。フロントボタンの中央には、音楽を愛するデザイナーの思いを込めたギターと剣のモチーフを。フランスブランドであることを示すよう、周りにはパリのアドレスをぐるりとあしらった。
一方リベットには、A.P.C.ロゴと5つ星(スター)をオン。いずれもインディゴブルーとマッチするシルバーで統一している。
また、コレクションブランドならではのアイデアも。ほとんどの展開モデルは、メンズ、ウィメンズで差異の少ないユニセックス仕様。この中性的なデザインは、ファッションブランドならではの感性から生まれている。
1987年、デザイナーズファッションブランドとして、ジャン・トゥイトゥがA.P.C.をスタート。ブランド初のデニムが生まれたのも同じ年だ。
実はA.P.C.からデニムパンツが生まれたのは、ジャン・トゥイトゥの身に起きたアクシデントが由来。ブランド設立前、スペイン・バルセロナへ旅行に出かけた、ジャン・トゥイトゥはロストバゲージに遭い、お気に入りのデニムをなくてしまう。新しくジーンズを買おうとするも、なかなか気に入ったものが見つからなかった…。
それなら“自分が履きたいと思うデニムを作ろう”と生まれたのが、フォーストモデルの「ジーン スタンダード」だ。ウエストを高めに設定したストレートレッグが特徴で、未加工のセルビッチデニムを使用している。A.P.C.のブランドコンセプトを凝縮させたようなシンプルなデザインは、30年経た今も新鮮に見える。