RABD(アール エー ビー ディー)の2020年春夏コレクションが、2019年10月19日(土)に渋谷ヒカリエにて発表された。
今季は「ベクトル」をテーマに、誰もが目にしたことのある同じものを、距離感とベクトルの調整によって新たなものに創りかえる。ランウェイの中央には、青いライトでベクトルを表現し、その両サイドをモデルが闊歩する。まるで、ベクトルの先にあるものを追い求めて歩くかのようだった。
"安価な素材で何ができるか"と、主にナイロンやデニム、コットンを加工して作られた今回のルック。レザーのように光沢のあるアウターには、加工して作ったフェイクレザーも使用していた。ハリのある素材感のロングコートなどは、防寒着と同じ加工を施した薄手のコットン生地。また、デザイナーの三木 勘也が、今季のベクトルの最終地点だったと語るのは、ショーの後半から登場したデニム生地。ケミカルウォッシュを用い、出来上がるまではどんな柄になるかわからない、素材の未知なる可能性を引き出したデザインだ。
パンツは、前季に引き続き、ストリート感のある、引きずるほどのオーバーサイズのデザインを主流とした。スーパーワイドのパンツに様々なタックを入れることで、1つ1つ独特なフォルムに仕上げる。歩く度に風を捉え、たおやかになびくパンツは、時にエレガントに、時に力強い印象へと導く。ジャケットには、パワーショルダーのテーラードジャケットを採用し、男くささを演出した。
モノトーンのアイテムに組み合わせたのは、蛍光色のトップスやパンツ。黒の中に浮き出すような鮮やかな色味が、見る者の目を惹きつける。パンツのサイドラインにネオンカラーを取り入れることで、曲線的なパンツのシルエットが強調されていた。
ショー全体を通して目に留まったのは、モデルが身につける長いシルバーチェーン。肩や首、パンツの腰部分から掛けられたシルバーチェーンが、モデルの動きに合わせ、力強く、時にはしなやかに揺れて、自由でジェンダーレスな雰囲気を漂わせる。それもまた、今回のテーマである「ベクトル」の1つだった。