ターク(TAAKK)の2021年秋冬コレクションが発表された。
夢とうつつ。言葉にするとこれら2語は正反対の意味を持つ、不連続なものかもしれない。しかしいま、ベッドに横たわり、睡魔の手が伸びてくることを想像すると──意識は溶けるように曖昧になりゆき、思考は霞に沈み、そしていつの間にか眠りに落ちる。そこは夢の中。夢とうつつとを分けるものは明晰には経験されず、生々しいほど曖昧に繋がっている。
今季のタークが表現しようとしたのは、夢とうつつとが互いに交錯する不明瞭な世界。夢〈と〉うつつ、のように、明晰な“AND”で区別された二者をモンタージュするのではない。ウールのテーラードジャケットがいつの間にかナイロンのMA-1ブルゾンに変化しているジャケットが示すとおり、なめらかな階調をなすようにして、あるいは靄に沈んで変容するようにして、2つの要素が溶け合っている。
不明瞭に境界を霞ませる“and”、ピアニッシモで囁かれる“and”──シャツブルゾンやミリタリーブルゾンもまた、上半分が光沢を返しつつも、下半分は異なる素材感や柄へと、溶けるように変化している。一方で、ブーツカットシルエットのパンツは、深みのあるモスグリーンが霞んでデニム地のインディゴを朧げに晒しだす。
夢とうつつの交錯のなかでは、重さもその視覚的な把握とは見合わない。ステンカラーコートは、ロング丈でありつつ羽毛のごとく軽い。テーラードジャケットもまた、整ったフォルムでありながらも柔らかであり、タックインで着こなすことにより、素材感のギャップを際立てている。
夢かうつつか、不分明な世界で出逢う花──溶けるようにドレープを織りなすシャツやパンツ、あるいはプルオーバーには、花々を朧げな姿でのせている。花のシルエットは霞に沈み、そのかたちは不確かかもしれない。しかし、花の姿と背景とが入り混じる純粋な色彩の乱舞を見てとることも、ここでは許されよう。