エマリーエ(EMarie)の2020年春夏コレクションが、2019年11月25日(月)、みなとみらいの横浜ランドマークホールにて発表された。
2019年秋冬コレクションから続いて、理化学研究所とのコラボレーションのもと、AI(人工知能)と協働したコレクションを発表したエマリーエ。AIが捉える“自然の美”から生まれたイメージを、現実の衣服へと移しかえる“生成過程”をダイナミカルに提示するドレスを披露した。
制作は、AIとエマ理永の“協働”によるものだ。AIはエマリーエの過去の作品約500点から“エマ理永の世界観”を学習し、それを画像データとして作りだす。そうして得られた画像を着想源に、エマ理永が具体的に素材の決定や立体化を行う。その意味で、AIは制作プロセスでインスピレーションを与えるいち段階を担う。イメージがどう立体化され、ドレスがどう動くかは、あくまでエマ理永のクリエイティビティによるのだ。
そうしたAIによる画像生成のステップを印象づけるのは、色彩がグリッド状に散りばめられたドレスだろう。ややウエストを絞り、直線的なラインを描くフォルムのシンプルさと相まり、まさに生成過程にあるようなイメージの揺らぎを強調している。裾もグリッド状に処理され、イメージが布地へと移り変わるその瞬間を切り取ったかのようである。
AIに学習させたのは、エマリーエの作品だけではない。そのひとつが“貝殻”だ。理永が「自然でもっとも美しいもの」と語る“貝殻”を合わせて学習させて生み出したドレスは、ウエストを絞ったボディには丸みを帯びたモチーフが幾多と連なり、ドレスの上で波打つよう。裾には貝殻を連ねたような布がアシンメトリーに配され、螺旋を描くかのようにダイナミカルに揺れる。
貝殻とアシンメトリーは、引き続き変奏される。クリノリンよろしく、しかし左右非対称に広がったドレスは、ラバー風の光沢を帯びた表面に数多と突起物が配され、それ自体がひとつの大きな貝殻のようである。また、スカート部分の布地をたっぷり持ち上げ丸めることで、不定形で立体的なフォルムを生み出したドレスも登場。ブラックやグレーのストライプは、ゆったり形成される貝殻の模様を彷彿とさせる。
そして“貝殻”のモチーフに続くのは“薔薇”である。ウエストを絞り、光を帯びた布地が裾にかけて華やかに広がるウエディングドレス。普通は下に向かって落ちてゆく布地の一部は大胆に持ち上げられ、渦巻き、華麗な薔薇の花をかたちづくる。もともとAIが生み出すのは平面的なイメージである。しかし、薔薇がダイナミックに花開くように、AIが生み出したイメージはエマ理永の“感性”を通して現実のものとなるのである。