リック・オウエンス(Rick Owens) 2020年秋冬コレクションが、2020年2月27日(木)フランス・パリで発表された。
今季はローズリー・ゴルドベルクによるパフォーマンスアート組織「Performa」を着想源にしたメンズコレクションと連動し、柔らかなニットのボディスーツをベースにしたウィメンズコレクションを展開。メンズ同様に、不均一にボディラインをみせるニットルックは、ショーが進むごとに様々なアレンジを見せてくれる。
例えば透明なPVC素材のアウターを重ねたり、あらわとなった肌を隠すように、ニーハイブーツを組み合わせてみたり。またこうしたレイヤードアイテムもどこか不自然で、膝を超えるほどのスリーブや、トレーンを引くような超ロング丈のパンツなど、いくら重ねても私たちの思い浮かべる“完璧”な衣服が完成する気配はない。
ツンと上を向くイカリ肩をもつアウターも象徴的な存在。構築的な表情をもつレザージャケットやテーラードジャケットは、対局な存在となる柔らかなニットウェアを包み込み、パワフルな存在を主張する。
ショーが進むにつれて、そのショルダーを極端に拡大させたルックも登場。隆々と盛り上がったアグレッシブなショルダーは、カンサイヤマモト(Kansai Yamamoto)から着想したという、マニッシュなグラフィカルラインを乗せることでより力強い表情へと進化。これまでのスタイルが“控えめ”に感じられてしまうほどだ。リック・オウエンススは、この独特のスタイルを、フランスの建築家ル・コルビュジエによるモデュロール と表現している。
こうした“サプライズ”を詰め込んだ一連のワードローブの中でも、ひと際目を惹いたのが、ショーの終盤に靄の中から現れたダウンケープの漆黒アウターだろう。
後ろから見るとスクエア型のマントのようなフォルムを持つこのアウターは、モデルが腕を広げると、凧のように広がる仕掛け。まるで今にも飛び立ちそうなその様は、既存の固定観念を打ち破るメゾンの飛躍を予感させてくれた。