ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON) 2020年秋冬ウィメンズコレクションが、フランス・パリ市内のルーブル美術館にて発表された。
歴史深い名作の数々からモダンアートまでを所蔵する、世界最大級の美術館を舞台にした今シーズン。ニコラ・ジェスキエール率いるルイ・ヴィトンが掲げたテーマは、まさしくこの場所に相応しい「タイムクラッシュ(時間の衝突)」だ。
ファッションの歴史を軸にアイディアを膨らませた二コラは、もしこの瞬間に、これまでの時代を育んできたファッションが一度に集結したら…?と想いを馳せた。きっとそこには、予想外な組み合わせと共に、本来の役割を覆すほどの“衝突”も存在するはず。旧来のものへの回帰によって、新たなものを生み出す二コラのコレクションが幕を開ける。
ショーの序盤に登場したのは、アクティブなスポーツウェアとのミックススタイル。鮮やかな色彩をのせたフード付きジャケットやベストは、クラシカルな細身のテラードパンツや、フリル付きスカートとドッキング。またマニッシュなボーダー柄のスーツとのレイヤードスタイルなど、自由な精神で、様々なテイストの衣服がコレクションの中で交わっていく。
ラッフルをたっぷりとのせたボリューミーなスカートも、本来のフェミニンなテイスト“以外”のジャンルで異なる役割を果たしていく。中でも印象的だったのは、相反するマニッシュなテーラードとの出会い。シルエットの美しさが際立つダンディなジャケットに、ふんわりと膨らむスカート、そして中立的なクラシカルなローファーというアンバランスなスタイルは、ジェンダーの垣根を曖昧にする、現代的なアプローチが感じられる。
貴族たちが纏うような、バロック調のジャケットは、裾を短くカットしてフレッシュなスタイルに。ビッグショルダーのブラックジャケットに差し込んだクラシカルな花模様のドレスは、PVCのような光沢を放つファブリックで、モダにブラッシュアップさせているのが印象的だ。足元はカジュアルなスニーカー、手元にはコンパクトなポーチといった具合に、小物使いでもシティライクな要素へと引き寄せいている。
会場に流れたのは、ウッドキッドとブライス・デスナーの作曲による『Three Hundred and Twenty』。ショーミュージックの一部には、バッハと同時代に生まれながら、評判を得ずしてその人生の幕を閉じた作曲家ニコラ・ド・グリニーの曲が蘇り、時を超えてルーブル美術館へと鳴り響いていた。