マメ クロゴウチ(Mame Kurogouchi ) 2021年リゾートコレクションが発表された。
今シーズン、デザイナーの黒河内はポルトガルへと旅に出た。心に刻まれた一瞬一瞬の風景や空気感、旅先で買い求めたヴィンテージフォト、自らスナップした写真…。そんな“旅”という非日常的な体験がもたらしてくれる記憶や思い出をたよりに、異文化への慕情と私的感情を重ね合わせた、コレクションが制作された。
ポルトガルの街に漂う土の記憶や、テラスで目にした古びた木製家具。そんなノスタルジックな風景とは対照的に、頭上に広がっていたのは澄み渡るほどの真っ青な空だ。そんな黒河内の記憶を代弁するかのように、カラーパレットには、インディゴを中心とした様々なシェードのブルーを中心に起用。また瞳に映った“土っぽい”街の風景は、落ち着いたブラウンやエクリュを差し込むことで、詩的に表現している。
ファロの海岸で目にした名も知れない小花。時間と共に薄れゆく性である“記憶”の中でも、その儚く美しい姿は、黒河内の心にしっかりと焼き付けられていたに違いない。それを証明してくれるのは、キュプラの楊柳生地製ドレスの上で生き生きと蘇ったフラワーモチーフ。職人による丁寧なハンドプリントによって、確かな温もりも忍ばせている。
ブランド初登場となるデニムジャケットは、ボリューミーなシルエットに、エレガントなコード刺繍で縁どりを加えているのが特徴。今季のムードを落とし込んだ、ヴィンテージライクな表情も印象的で、パンツやスカートとのセットアップで展開される。
都会的なフィッシャーマンニットとして、黒河内が再解釈したニットウェアにも注目したい。複雑なテクニックの融合によって、ゆったりとしたドロップショルダーに仕上げたスリーブには、“ノルディック”にインスパイアされた柄をあしらっているのがポイント。また深いブルーのサマーコットンで織り上げたことで、この季節に相応しい爽やかなニットウェアへと昇華させている。