展覧会「電線絵画展 ─小林清親から山口晃まで」が、東京の練馬区立美術館にて、2021年2月28日(日)から4月18日(日)まで開催される。
街中を縦横無尽に走る電線は、青空を遮り景観を損ねるものと忌み嫌われやすい。他方で、そのように雑然とした雰囲気は、人びとが幼いころから慣れ親しんだ街の風景を織りなすものでもあり、時として郷愁すらも喚び起こそう。
展覧会「電線絵画展 ─小林清親から山口晃まで」では、日本の明治初期から現代までの美術作品に描かれた、電線や電柱に着目。日本画や油彩画、版画、そして現代美術作品など約130点の作品から、各時代において電線や電柱が果たした役割と、そこに向けられた人びとのまなざしの変遷をたどる。
日本で電信柱が設置され、電信線が街中を走るようになるのは1869年のこと。その様子は浮世絵や油彩画のなかに、文明開化の象徴として晴れやかな姿で描かれている。小林清親は画面の真ん中に堂々たる電信柱を描くのみならず、《従箱根山中冨嶽眺望》では富士山と電信柱を組み合わせることで、自然への畏怖と近代化への誇りとが交わる新しい風景画を生みだしている。
一方、岸田劉生の《代々木附近(代々木附近の赤土風景)》からは、電柱が近代都市・東京の拡大を象徴するものとして描かれていることが見て取れる。また、1903年には東京に最初の路面電車が開通。小絲源太郎の《屋根の都》に見るように、キャンバスを走る架線は近代都市の象徴的な存在として描かれた。
第二次世界大戦後、上海から帰国した洋画家・朝井閑右衛門は、横須賀にアトリエを構え、「電線風景」の連作を手掛けた。電線と架線が交差する光景に、朝井は幻想をも見出したのだった。一方、東京に生まれ育った木村荘八は、この街の変容を目の当たりにしてきた。会場では、永井荷風の小説『墨東綺譚』や『東京繁盛記』の挿絵から、木村が東京に注ぐまなざしを紹介する。
戦後日本は、高度成長期を迎え、東京オリンピックを開催。本展では、この頃の町並みに描かれる電柱や電線の姿に光をあてるとともに、山口晃《演説電柱》など、現代美術作家が手掛けた絵画や立体、写真から、電柱や電線の表現も紹介。美術作品における電線や電柱を通して、近代都市・東京を見つめ直すことができるだろう。
展覧会「電線絵画展 ─小林清親から山口晃まで」
会期:2021年2月28日(日)〜4月18日(日) 会期中に展示替えあり
会場:練馬区立美術館
住所:東京都練馬区貫井1-36-16
TEL:03-3577-1821
休館日:月曜日
開館時間:10:00〜18:00(入館は17:30まで)
観覧料:一般 1,000円、高校生・大学生・65〜74歳 800円、中学生以下・75歳以上 無料
※その他各種割引制度あり
※一般以外(無料・割引対象者)は、年齢などの確認ができるものを要提示