キディル(KIDILL)は、2021-22年秋冬ウィメンズ&メンズコレクションを発表した。パリ・ファッションウィークの公式スケジュールでの発表は、今回が初となる。
今季のタイトル「Desire」=“欲求、欲望”には、世界的に不安定になっている今だからこそより強い服を作りたい、というデザイナーの末安弘明の気持ちが反映されている。ショーには、ミュージシャンの灰野敬二をフィーチャー。50年の間、一貫して精力的にノイズミュージックを生み出してきた灰野敬二の信念にパンクな精神を感じ取り、末安がコラボレーションを提案したという。
また、過去にナイン・インチ・ネイルズやドーターズ、ゾラ・ジーサスといったアーティストのアートワークなども手掛けてきた、ロサンゼルスを拠点に活動するアーティストのジェシー・ドラクスラーともコラボレーション。ペインティングやコラージュといった手法から生み出される、モノクロームのオリジナルアートワークをキディルのパンクなスタイルに融合させた。
ジェシー・ドラクスラーの手掛ける白と黒のハイコントラストなグラフィックは、カットソーのフロントにダイナミックにあしらわれたり、複数のアートワークをコラージュした総柄プリントでジャケットやパンツに落とし込まれたり。目玉や頭部を描いたパッチは、パンツやジャケット、コートにスタンプのように並べて繰り返しあしらわれた。抽象的ながらも強いインパクトを残すグラフィックの数々は、反復されることでより一層抽象性を増し、どこか狂気じみた印象を放っている。
ファスナーを配し切り込みを入れた変形ケープや、細かく生地を繋ぎ合わせたパッチワークのコートなど、粗さやダメージ感のあるアイテムが登場する一方で、目を引いたのは端正なテーラードジャケットやロングジャケット。オーセンティックな仕立ては、布地に配したグラフィックの強さを際立たせたり、コーディネートしたアイテムのアナーキーさを相対的に強調したりする機能を果たしている。
例えば、落ち着いた色味のブルーのロングジャケットには、ヴィヴィッドなフューシャピンクのペイントやパッチをあしらったセットアップをスタイリング。対照的なイメージのアイテムを組み合わせることによって、静けさと激しさを持ちあわせたノイズミュージックのような、静と動の対比を描き出した。
2020年から継続してタッグを組んできたエドウイン(EDWIN)とのコラボレーションは、今季も登場。ペイントとグラフィックを大胆にあしらった、パッチワークデニムジャケットやシャツ、デニムパンツが披露された。また、ディッキーズ(Dickies)やrurumu:(るるむう)、ヒュースト(hyusto)、カシラ(CA4LA)とのコラボレーションアイテムも展開。エッジの効いたアクセサリーは、マルコムゲール(Malcolm Guerre)とのコラボレーションによるものだ。