ミカゲ シン(MIKAGE SHIN) 2021-22年秋冬コレクションが、「Rakuten Fashion Week Tokyo 2021 A/W」2日目の2021年3月16日(火)に発表された。2019年にニューヨークで生まれたブランドにとって、東京コレクション初参加のフィジカルショーとなる。
デザイナー・進美影が手掛けるミカゲ シン は、ナラティブなコンセプト×建築的なデザインを融合させたジェンダーレスなウェアを展開する新鋭ブランド。創業時より海外を中心にコレクションを発表してきたが、2020年9月より日本での本格展開をスタート。東京コレクションのデビューシーズンとなる今季は、時代の転換期と密接に関わり合う“アートや文学”をヒントに、現代の混沌と新しいものが生まれる予感を衣服へと落とし込んでいる。テーマは、「The Process」。
今季のテーマを体現するピースは、ファーストルックから反映された。ランウィに続々と顔を出す、スタンドカラーのトップスやロング丈ドレスにプリントされたのは、哲学者・ニーチェの手記をオリジナルコラージュしたテキスタイル。
時に、手元のノートに乱雑に書きなっぐたかのような筆致は、まるで偉大なアイディアが生まれる“思考のプロセス”の瞬間を垣間見ているかのよう。衣服を縦断するような大胆なフリルや、構築的なアシンメトリーなシルエットも相まって、より一層複雑な表情が増しているのも印象的だ。
こうした文学に続き、アートにまつわるアプローチもまた、様々なかたちとなって登場する。固まり切らない“流動性”を表現したという、京都の伝統工芸品・墨流しの布地は、シアーなブラックドレスの上で、しっとりと揺らめく表情が特徴的。
またアイボリーのスウェットにプリントされた“洋ナシ”は、一説によると「醜いもの」が名前の由来であることから、時を経て変わりゆく“価値観の変容”を意味しているという。
衣服そのもののデザインには、アウターからボトムスまで、流れるようなプリーツをたっぷりとあしらって。また全体的にモデルの体躯を覆うゆったりとしたシルエットが主流で、中でもオーバーサイズに仕上げたトレンチコート風のアウターは、アームのフォルムを変えられるユニークなジップ付きのピースだ。モデルのジェスチャーによって、分量たっぷりの布地が腕から落ちるその様は、まるで日本の伝統衣装・着物を連想させる優雅さえ感じられる。
カラーは、ブラック、ホワイト、ブラウンといったベーシックなパレットを基調に。そのシンプルな色彩だからこそ、スリーブに加えたドローコードやレースアップといったディテールの動きが、コレクションにリズムをもたらしていく。そしてショーの終盤にかけては、フリンジをアクセントにしたニットウェアも登場。ワンピースにカーディガンをドッキングしたようなピースには、超ロング丈のフリンジを飾ったことで、そのフサフサとした揺らめきが観る者に余韻をもたらしていた。