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伊藤さんはオファーを受けていかがでしたか?

伊藤:まず、池松さんとお芝居で面と向かって“しっかり共演する”ということが1つの密かな目標だったので、巡り巡って「やっときた!」という思いでした。

池松:えー!そんな……

伊藤:そうなんですよ!それに、私、クリープハイプさんのことがシンプルに大好きでした。それこそ松居監督とクリープハイプさん、池松さんがタッグを組んでやっていた映像作品は「なんてゴールデンタッグなんだ!」と思って見ていた立場だったので、このお三方が揃う現場に関わることができて本当に恵まれていると思います。

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真3

池松さんと伊藤さんは本作が初共演。恋人役を演じる上で大変だった部分もあるのでは?

池松:はじめましてでしたが、お互い信頼して、現場でお互いに心の中でチューニングしながらシーンの密度を上げていけたように思います。強いて言うなら、お互いリラックス出来るように現場ではなるべく頑張って、1日2個くらい質問するようにしていました(笑)。

伊藤:覚えていますよ!1日2回くらい話しかけてくださったことは(笑)。

池松:いきなりぎゅっと関係性を詰める、みたいなことが苦手だし下手なんです(笑)。それでもはじめましてから2週間という撮影期間の中で、6年間の出会いと別れを体現する必要がありました。だから、結構がんばって話しかけて(笑)。

伊藤:(笑)。でも、撮影の終わりにかけてはその“1日2回”が“1日8回”だった日もありますし、“葉と照生”の関係性を作りやすい距離感を池松さんが目指してくださったのだということは感じていました。私ももちろんそういう風にできたらいいな、と思いつつ、演じるシーンごとに探っていった感じです。

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真17

伊藤:あとは、ダンスの練習を一緒にしましたよね?

池松:そうだ、練習したね。

照夫は元ダンサー。2人で踊るシーンも登場します。

池松:皆川まゆむさんという世界的に有名な方がついてくださって、ダンスのシーンは全て監修してくださいました。

伊藤:振付が本当に素敵でした。葉と照生が追いかけっこをするシーンがあるのですが、ちょっとした手振りのおかげでドキドキして。振付に感情をいざなっていただいた部分が結構ありました。

では、松居監督からの演出で印象的だったものは?

伊藤:台本の一部に私の実体験が反映されています。松居監督とクランクイン前にお会いする機会があって、その時に「ちょっと恋愛経験聞いていいですか?」とインタビューされました。

池松:そうだったんだ。

伊藤:「どんな恋愛しました?」とか、「こういう時どうするの?」とか色々答えて、割とそのまま採用されたのが「なんで追っかけてこねえんだよ」というセリフ。本当は追いかけてほしいくせにそのまま去って行く……という、少し面倒くさい部分が採用されました(笑)。

池松:ちなみに僕は何も聞かれていないですね。

伊藤:最初池松さんも同じように聞かれていると思っていたので、「池松さんってこういうタイプなんだ!」と勝手に思っていました(笑)。

池松:違いますよ(笑)!

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真9

『ちょっと思い出しただけ』は照生や葉をはじめとする6年間の物語ですが、この6年間を振り返って、ご自身が変化したと思うことはありますか?

池松:自分の意志では色々と考えてやっていますが、自分がそんなに変わったとは思わないですね。もちろん、年代に応じたテーマのようなものはあると思います。6年間の中で30代にもなり、日々変化を求めてはいるので、6年前と比較すると感覚など、あまりにも違う事はあると思います。

変化しては戻ったり、ぐるぐるしながら生きている、生かされているような感覚です。強いてあげれば気力は全く変わらないけど体力が若干落ちました(笑)。

伊藤:6年前、21歳の時に初めて1人暮らしを試みて、速攻で嫌になって実家に帰りました。とにかく寂しくて、1人でいられなくて。でも、ふと2020年の春ごろに「いま実家を出ないと一生出られない気がする」となんとなく感じて、いきなりまた1人暮らしを再開しました。ここ最近は、色々と制限されていたので、逆に訓練のようになって1人で過ごせるようになりました。

状況が功を奏して鍛えられた、ということですね。

伊藤:そうですね、以前よりも1人の時間が嫌いではなくなりました。1人で色々考える時間も悪くないなって。「こうやって1人に慣れていくのかな……」という恐怖はありますが(笑)。

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真20

伊藤:あと、『ちょっと思い出しただけ』のように「なんでもない日常」を描いた作品に対して、以前は正直少しだけ苦手意識がありました。でも『ちょっと思い出しただけ』に描かれている人生のほんの一部の物語を見て、“じんわりいいな”と思えたのは私が成長したということかもしれません。

学生時代は特に、「起承転結!伏線回収!」といった劇的な作品ばかり好んで見ていました。当時、この手の作品は「何が言いたいんだ?」と魅力をなかなか理解できませんでした。でも、「なんでもない」ことが実は「なんでもある」し、日常にドラマは転がっているということが分かるようになってきて。普遍的なことを良いと感じられるようになったのは、自分の中で変化した部分だと思います。

映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』からのインスピレーション

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真15

『ちょっと思い出しただけ』の劇中には、ジム・ジャームッシュ監督の映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』を彷彿させるエッセンスが散りばめられています。

池松:映画『ナイト・オン・ザ・プラネット』ではウィノナ・ライダーがタクシー運転手を演じていますが、伊藤さんが演じる葉もタクシー運転手。葉と照生の会話にも、『ナイト・オン・ザ・プラネット』を思わせるやりとりが反映されています。あと、1日の連続性を描く、ということで言うと、同じくジム・ジャームッシュの『パターソン』からもDNAを受け継いでいると言えます。

『パターソン』には本作にも出演している永瀬正敏さんが出演されていますね。

池松:永瀬さんが現場でジム・ジャームッシュのエピソードを何個か話してくださって、その中でも僕が特に印象的だったのが、ジム・ジャームッシュとカメラの話でした。

ジム・ジャームッシュはずっとカメラを持ち歩いていて、出会った俳優やスタッフのポートレイトを撮るのが好きなんだそうです。そんな話をしてくれた永瀬さん自身も同じように、『ちょっと思い出しただけ』の現場でカメラを持ち歩いてポートレイトを撮っていて。僕と伊藤さんも撮っていただきました。

永瀬さんがいつもカメラを持ち歩いているのは知っていたんですが、その話を今回聞いたときに“パーソナルな出会いを刻む”ということをジム・ジャームッシュから受け継いで、今回の現場にもそれを持ち込んでくれているような気がして。ジム・ジャームッシュや永瀬さんにとっての映画と、カメラのシャッターを切って個人的なポートレイトを撮ることは延長線上にあるのかもしれないと感じました。

そういうインスピレーションを映画の中に、注入していかなければいけないなと改めて思わせてもらいました。勿論お2人のようにさりげなく。

伊藤:永瀬さんがカメラを持って現場にいる姿はとても印象的でしたよね。私、ずぶ濡れになっているシーンのすぐ後に「撮りたい」と永瀬さんがおっしゃって(笑)。びっちゃびちゃのまま撮りましたけど、それこそ瞬間を刻みたかったのかな、と思いました。

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真4

『ちょっと思い出しただけ』では、『ナイト・オン・ザ・プラネット』が照生と葉の1つの映画体験として描写されていますが、ご自身の映画体験を振り返って、あらためて“映画の魅力”をどう考えますか?

伊藤:映画館に行って映画を観るということが、私にとってはとてもワクワクすることで、大好きなことでした。家族や友達、恋人、誰でもいいけれど、ふと誰かと「映画館に行こう」「映画を観よう」と思う時の楽しい感覚は、個人的にはずっと覚えていたい。実はこうしてスクリーンの中に自分が映っていることも、いまだに夢みたいだなと思っています。

池松:映画館は今や贅沢品ですよね。お金を使って時間を使って、あの暗闇の中で色々な人生の光と影を観る、というのは贅沢な時間だと思います。誰と観たのか、どんなタイミングで観たのか、映画館に向かう道中も含め、家で見るよりも体験として記憶に残るものだとも思います。映画館に育てられてきた自分が映画館や映画館で観るという体験を守っていくためには、何より人が映画館で観たいと思えるものを作っていくしかないと思っています。

ジム・ジャームッシュが30年前に、皆が“観たい”と、観てよかったと思えるインディペンデント映画を作ってミニシアターブームを起こしたように、自分たちもいかに良い作品を打ち出せるかが何より重要な事だと思っています。

池松壮亮, 伊藤沙莉 インタビュー|写真14

劇中において『ナイト・オン・ザ・プラネット』という映画が葉や照生にとって大切な1本であったように、池松さん、伊藤さんそれぞれにとって大切な映画を今1本挙げるとすると?

伊藤:ずっと一番好きな映画は『ふたりの男とひとりの女』。ジム・キャリーがマイフェイバリットヒーローなので、ジム・キャリーの出演作は全体的に好きなのですが、中でも特に衝撃を受けた作品です。ジム・キャリーが演じるのは2つの人格を持つ男性。彼の中の2つの人格が1人の女性をめぐって喧嘩するシーンを見た時に、その乱闘ぶりがものすごく笑えると同時に少し切なさもあって。面白さの中に心をぐっと掴んでくるような演技をいつも見せてくれるのがジム・キャリーだな、と思いました。

池松:数えきれないほどあるので、明日には変わっているかもしれませんが(笑)、今頭に浮かんだものを挙げるとすれば黒澤明監督の『生きものの記録』とかどうでしょうか。素晴らしい作品なんですが、物語や映画や表現っていわば全て“生きものの記録”ですよね。 “人間の何を記録していくのか?”ということを映画に携わる人間として僕も日々考えているのですが、『いきものの記録』を観ると“ああいうことをやっていきたいな”と思わされます。

クリープハイプ&尾崎世界観も劇中に登場

脇を固めるキャストも実力派揃い。さらに、クリープハイプが劇中で演奏するバンド役としても出演するほか、尾崎世界観は劇中の重要な場⾯で登場するという。

<主な登場人物&キャスト>

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