金沢21世紀美術館では、展覧会「アペルト16 AKI INOMATA Acting Shells」を、2022年4月9日(土)から9月11日(日)まで開催する。
若手作家を中心に個展形式で紹介する展覧会シリーズ「アペルト」。その第16弾では、人間と生き物の関係に着目し、動物とともに制作した作品を数多く手がけてきたAKI INOMATAの展覧会「Acting Shells」を開催、進行中のプロジェクト《貨幣の記憶》を中心に紹介する。
本展のキーとなるのが、「シェル」つまり貝殻。貝殻は通常、貝の身を守るシェルターや「やど」の役割を果たしている。一方でINOMATAは、「シェル」が有する能動的な振る舞いに着目し、人間社会や生命の進化史における「シェル」の意義へと多角的に光をあててゆく。
展示の軸となる作品《貨幣の記憶》は、真珠貝の中に世界各国の通貨のシンボルとなる肖像画を融合させることで、「貨幣の化石」を作ることを試みるプロジェクトだ。会場ではこの実物とともに、貝殻が海の底へと沈んでゆく様子を捉えた映像も紹介。貝殻が「貨幣の化石」となってゆく長い時間スケールを想像させることで、人びとを取り巻く経済システムへの再考を促す。
また、《Lines ─ 貝の成長線を聴く》は、福島県相馬市で東日本大震災の前後に収穫された2つのアサリの成長線を写した作品。成長線とは、いわば木の年輪と似て、潮の満ち引きによって変化する貝の1日ごとの成長過程を観察することができるものだ。本展では、2つのアサリの違いが浮かび上がる写真に加えて、アサリの成長線をレコードに置き換えることでその成長過程を音で擬似体験する作品も紹介し、アサリの貝殻から人間世界に対する異なる視点を提示する。
さらに会場では、世界各地の都市を透明な樹脂でかたどった「やど」を、ヤドカリに渡して住んでもらう代表作も展示。「やど」を選ぶのはあくまでヤドカリだが、人間からすると、ヤドカリのアイデンティティは外側の「シェル」からでしか判断できない。INOMATAはいわばここに、人種や性別といったカテゴリーで他者のアイデンティティを判断する人間社会を重ね合わせるのだ。本展では、地元のアクアリウムショップの協力のもと、ヤドカリの成長を約5ヶ月にわたって見守ってゆく。
展覧会「アペルト16 AKI INOMATA Acting Shells」
会期:2022年4月9日(土)〜9月11日(日)
会場:金沢21世紀美術館 長期インスタレーションルーム
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
会場時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
休場日:月曜日(7月18日(月・祝)、8月15日(月)は開場)、7月19日(火)、8月16日(火)
料金:無料
【問い合わせ先】
金沢21世紀美術館
TEL:076-220-2800