2013年ドイツ・アカデミー賞主要6冠制覇し、海外の30を超える映画祭でも数々の賞を獲得したドイツ映画『コーヒーをめぐる冒険』が、2014年3月1日(土)より日本で公開される。この『コーヒーをめぐる冒険』は新鋭監督ヤン・オーレ・ゲルスターの初監督作品。
ストーリーは主人公ニコがコーヒーを飲みそこねた朝から始まる。2年前に大学をやめてから、ベルリンでただ“考える”日々を送っているニコ。恋人の部屋でコーヒーを飲みそこねた朝、ツイてない1日が幕を開ける。車の免許が停止になり、アパートの上階に住むオヤジに絡まれ、気分直志に親友マッツェと出掛けることに。さらに街に出ると、ダイエットに成功し別人となった元同級生のエリカ、クサい芝居の売れっ子俳優など、クセのある人たちが次々と現れる。
主演はドイツで高い人気を誇る『素粒子』のトム・シリングで、等身大の青年を演じ、ドイツ・アカデミー賞主演男優賞を獲得した。ユニークでどことなくチャーミングなストーリーとともに、モノクロのシャープな映像で捉えられたベルリンの街も本作の重要な要素。アートと歴史、過去と現在が溶け合った、幻想的で美しい本当のベルリンを描いている。
また本作では、名作映画へのオマージュを探すのも楽しい。例えばオープニングはジャン=リュック・ゴダールの『勝手にしやがれ』を彷彿とさせ、シナリオにはフランソワ・トリュフォーのエッセンスが散りばめられ、おばあちゃんのシーンに流れる『惑星ソラリス』のサウンドトラックに心癒され、『タクシードライバー』のロバート・デ・ニーロのモノマネにニヤリとさせられる。さらに監督が大好きだというサリンジャーの「ライ麦畑でつかまえて」のスピリットも物語に注入されている。ドイツ・アカデミー賞音楽賞を獲得したクールな音楽は、若きミュージシャンによるオリジナルのジャズ。
世界のアートを牽引してきたフランスでも、ヌーヴェルヴァーグが生まれた時のようなフレッシュさ、ジム・ジャームッシュのデビュー作を感じさせ、ウディ・アレンのようにチャーミングな映画とまで絶賛された。
法律を学んでいたが何だかイヤになり、生きる目標を見失って、ただ今・人生・一時停止中のニコ。これは、そんなニコに少し揺さぶりをかける、ある1日の物語。どこか普通じゃない人たちと出遭い、ちょっと奇妙な出来事を通り抜けたことで、喜び、傷つき、戸惑いながらも、次の道へと続く扉が、ぼんやりと見えてくる。誰にでも身に覚えのある、何をすれば良いのか分からない不安な時期と、そこから抜け出す瞬間が、力の抜けたユーモアにアイロニーがピリッときいたタッチで繊細に描かれる。
【作品情報】
『コーヒーをめぐる冒険』(原題『OH BOY』)
監督・脚本:ヤン・オーレ・ゲルスター
出演:トム・シリング『素粒子』/マルク・ホーゼマン/フリデリーケ・ケンプター/ウルリッヒ・ノエテン/ミヒャエル・グヴィスデク
2012年/ドイツ/85分/ドイツ語/モノクロ/
配給・宣伝:セテラ・インターナショナル
2014年3月1日(土) 渋谷シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開
ドイツ映画賞6部門受賞(作品賞・監督賞・脚本賞・主演男優賞・助演男優賞・音楽賞受賞)
バイエルン映画2部門受賞(男優賞・脚本賞受賞)
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