イレニサ(IRENISA)は、2023年春夏メンズコレクションを発表した。

様々な要素を包み込む「水」を着想源に

今季のインスピレーション源は「水」。“清濁併せ呑む”という言葉があるように、水は様々な要素を内包している。一瞬と永遠、光と影、生と死、癒しと脅威といった相反する要素や、エロティシズムに至るまで、分け隔てなく、幅広い要素を「水」は呼び起こし、「水」の中に受け入れていく。矛盾や葛藤をも全て包み込む、その広大な感性を汲み取るようにして、“水との対話”をコレクションに投影した。

ゆとりを得つつ端正な佇まい

印象的なのは、「水」のようにゆとりを得ながらも、端正な雰囲気をまとったその佇まいだ。表面のフシ、シワ感が表情豊かな生成りのジャケットやパンツは、立体感のあるフォルムによって凛とした存在感を放つ。スナップボタンなど、装飾を最小限に抑えた、ミニマルでシームレスなデザインが、静謐な雰囲気をより一層強めている。

“曲線”を生かした仕立て

また、肩の曲線的なラインを引き立てるジャケットやシャツ、薄くしなやかな生地の落ち感を生かしたロング丈のプルオーバー、袖にボリュームを持たせることで丸みを帯びたシルエットに仕上げたワークジャケットなど、緩やかなカーブを描くような造形も目を引く。

セットアップのジャケットは、前合わせからそのまま連なっているかのように流れるショールカラーに仕立てることで柔らかさを添えた。スタイリングしたパンツも、ドレープを効かせたり、裾にかけて分量感を持たせたりすることで、水面が揺れるときのようになだらかな躍動を加えている。

自然の風景になじむテキスタイル

テキスタイルの色彩や柄もまた、「水」や自然を思わせる穏やかさを含んでいる。石の模様を彷彿させるブルゾンや、土のような色のシャツ、草花のように優しい色味のチェスターコートやパンツなど、自然の風景になじむカラーが落とし込まれている。

グレンチェックのジャケットやパンツには、まっすぐな水路が伸びるかのように水色の細いラインを差し込み、華やかな幾何学模様のジャカードコートは、深みのある紺や緑色の色彩を織り交ぜることで一体感のある風合いに。

ブラウンやホワイトのジャカードジャケットは、全て1色の糸で複雑な模様を織り上げ、まるで自然発生的に浮かび上がってきた模様であるかのような質感を表現した。