アキラ ナカ(AKIRA NAKA)の2010-2011A/Wシーズンコレクション。テーマは「Vltava」。
女性像、女性の内面性を表現してきたアキラ ナカが今回掲げたキーワードは「静寂、知性、女性性」。メンズウェアのディテールを取り入れた強いイメージだった2010S/Sに対して、「女性的であることを意識した」という2010-2011A/Wは、初めて使用するファーなどより柔らかい素材を取り入れた。
テーマとなる「Vltava(ヴルタヴァ)」はプラハの象徴ともされる川の名前(日本ではモルダウ川と呼ばれている)で、コレクションは古い写真集から見つけたというチェコのキュビズム建築からインスピレーションを受けている。「キュビズム」と言えばピカソに代表される有名な美術運動だが、唯一、チェコではプラハを中心に立体的な表現、建築に応用された。
キュビズム建築は、独特な曲線、鋭角的、斜面と直線の交差が特徴で、斬新かつ奇抜。それでもごく自然にプラハの街並みに溶け込んでいるのだが、この「どこか静かで知性を感じさせるプラハの街やヴルタヴァ川に自然ととけこむ建築」とコレクションで表現した「静かに、ありのままに女性をだしてくれるデザイン」が上手くリンクしている。
そして、ディテールには独特な曲線、鋭角的な要素が入り、立体的なフォルムなどキュビズム建築を思わせるデザインがちりばめられている。特に斜線、絶妙な曲線により表現されたニットは手作りでしか表現できない造形で、このあたりから「ニットの風合いの本当の良さを日本の人々に伝えていきたい」と語るデザイナーの中章氏の想いが伝わってくる。
いくつかのコレクションにはアキラ ナカではお馴染のグラデーションニットが効果的に使用されているが、注目はラペルの部分がグラデーションニットになっているジャケット。ぜひ手にとってそのグラデーションを見て欲しい。