実際に展開しているアイテムについては。
まずプリントのデザインを2種類作り、それから実際にどのアイテムに落とし込んでいこうかという具合に進めていきました。あまりたくさん作り過ぎず、使いやすいデザインを厳選して展開しようということになりました。やっぱりショールは一番使いやすく、どなたにでも身に着けていただきやすいということで採用しました。従来の顧客層にはもちろん、若い層にも使っていただけそうなものを目指しました。
やはり、若々しいアイテムなので、ティーンエイジャーにも使っていただけるプライスポイントを考えました。また、レザーグッズや蝶のキーチャーム、バッグのジップを蝶の形にしたり……。このコレクションのキーモチーフが蝶になったような気がします。最初は花はNOだと思ったのですが、このデザインの中でペイズリーが花の役割をしてくれているんですね。そこに蝶がぴったりマッチしたなと思います。
若い世代を意識した、ビジネス的な狙いもあったのでしょうか。
実は最初から、若い世代を意識したわけではなかったのですが、製作の過程で、これは若い人たちにも受け入れられそうだという感触はありました。元々、エトロのデザインやコレクションは、20代など若い層はあまり手にしてこなかったと思うんですね。ですが、今回の蜷川実花さんとのコラボレーションコレクションは気に入ってもらえるんじゃないかと感じています。実際、このコラボレーションをするにあたってマーケティングのところまでは考えてはいなかったのですが、若い方にも気に入って頂ければ嬉しいです。文化的にも非常に長い歴史を持っている、クラシックな存在であるペイズリーですが、それをポップに変身させることによって生まれたこのコレクションです。真夏に持っていただけたら素敵かなと思います。
文化が融合して生まれた新感覚のコレクションですね。
そうですね。これはまさに東洋と西洋の文化の融合です。やはりあらゆるジャンルで、異文化が融合したものは、とても面白いので、そういう意味でも期待しています。
エトロはこれまでもインドのトゥクラール・タグラさんといった若いアーティストとコラボしていますが、コラボレーションの相手を選ぶ時、ヤコポさんの中でルールのようなものはありますか。
あります。ユーモアそれから色ですね。
パターンやデザインを作る時のみずみずしさが重要だと思います。トゥクラール&タグラの絵画も、色やデザインにどこかエトロに共通するところがあるなと感じました。実花さんもそうなんですが、目に見える色やデザインをとても大事にしている方だと思います。これらのアーティストの共通点は、生きる喜びを目に見える形で表現しているアーティストだということです。もうひとつ、社会に共感を得られているということ。
なぜかと言うと、社会の深い部分を突き詰めているアーティストだからです。インドの長い文化も背負っているのだけれど、アイロニーをもって、人生を楽しんでいます。
このアイロニーがないと人生において何かを乗り越えたり楽しく生きて行ったりするのは難しいと思うからです。ポジティブなマインドが大切ですよ。
■ヤコポ・エトロ(Jacopo Etro) プロフィール
ヤコポ・エトロは、1962年9月22日、ミラノにてエトロ家の長男として誕生。1982年にエトロ社に入社。現在はアクセサリー&レザーコレクション、ホーム&テキスタイルコレクションのクリエイティブディレクター、そして、コミュニケーション部門を統括している。
また、イタリアのテキスタイル産業の代表として、2010年にイタリアファッションカウンシルの役員に就任。ヤコポは現代アートを愛し、その分野は彫刻や写真など幅広く、特に愛情をそそいでいるのは古代の織物。長い年月をかけてアジア、インド、中国などを旅して得たコレクションを貯蔵している。