メゾン マルジェラ(Maison Margiela)は、2023年8月10日(木)に表参道GYRE(ジャイル) 2階の店舗を同ビル1階へ移転オープン。それを記念し、2022年「アーティザナル」コレクションを展示するインスタレーション「シネマ・インフェルノ」を、2023年7月29日(土)から8月15日(火)まで、東京・渋谷のパークウェースクエア2にて開催する。
メゾン マルジェラの「アーティザナル」コレクションは、オートクチュールにあたり、クリエイションのプロセスにおける頂点。“クリエイティブな実験室”とも言える「アーティザナル」コレクションで提案されたアイデアやテクニックは、プレタポルテにあたる「Co-Ed」コレクションをはじめ様々なプロダクトに派生する。
2022年「アーティザナル」コレクションでは、ジョン・ガリアーノが、イギリスの演劇カンパニーImitating the Dogとのコラボレーションにより完成させたアッサンブラージュ(寄せ集め)・パフォーマンス作品「シネマ・インフェルノ」を発表。アメリカ南部を舞台に、逃亡を続ける不運な恋人たち“カウント”と“ヘン”を主人公とするダークポエティックなストーリーを、オートクチュール、映画、演劇を一体化してダイナミックに表現した。
今回、東京では、パリのフォーマットをベースに物語を辿りながらも、日本オリジナルに構成をアレンジしてインスタレーションが再演されることとなる。「アーティザナル」コレクションならではの超絶技巧を間近で目にできる貴重な機会だ。
「シネマ・インフェルノ」ストーリー
舞台はアメリカ南部。カウントとヘンは、銃で傷をおい、砂嵐に巻き込まれながら、コンバーチブルカーでアリゾナの砂漠を逃げていく。
孤立したホテルに車を停めたふたりは、そこが実は映画館であったことに気づき、映画のループに陥るように、心の奥底に潜む喜び、恐怖、苦悩、トラウマに絡めとられていく。ふたりの記憶はクラシックなアメリカ映画を思わせるシーンとなって次々と浮かび上がる。法の幻影に怯えて逃げ惑うふたりはいつしか錯乱し、最後には出発地点に戻り、息を引き取ってしまう。
渋谷・パークウェースクエア2のインスタレーション会場では、1階と地下1階の2つのフロアを使って「シネマ・インフェルノ」の世界を表現。
さながら“映画館”を彷彿とさせるエントランスを抜けると、「タビ」の足跡に導かれて1階フロアへ。ここには、数か所にスクリーンが設置されており、スクリーンを取り囲むように主人公のカウントとヘン、悪役のスペクトラル・カウボーイズ、ヘンの母親を演じるマネキンが設置されている。
着用している2022年「アーティザナル」コレクションに反映された、メゾンの主要なテクニックやコードにはどんなものがあるのだろうか。
例えば、今回の新たなテクニックである“サンドストーミング”。ジャカード、ニードルパンチ、フロッキング、ビーズ刺繍によって、生地表面を砂で覆われたかのように見せるこのテクニックは、アリゾナの砂漠を駆け抜けてきたカウントとヘン、そしてカウボーイたちを彷彿とさせる。オートクチュールならではの精緻な技法から生まれた“砂の浸食”には、時の経過をもデザインとして取り込むメゾン マルジェラならではの美学が潜んでいる。
手術室の医師や看護師が纏う服には、慣れ親しんだモノへの記憶を呼び起こすコード“メモリー・オブ”を表現した。極めてクラシックなトラペラーズラインのコートは、オートクチュールに使用されるエレガントなダッチェスサテンだけでなく、インダストリアルなムードを醸すネオプレンを採用し、両極とも思える素材をひとつの世界観で表した。手術着のようにざっくりと開いたバックのシルエット、グリーンのカラーは、“お馴染み”の医師たちの風貌を彷彿とさせる。