ナノアット(NaNo Art)の2024年春夏コレクションが発表された。テーマは「Rest in peace」。
今季のコレクションの着想源となったのは、特定の堆肥に埋めると約1年で水と二酸化炭素に分解される「生分解ポリエステル素材」だ。リサイクルやリユースと違い、生分解はそこに一度終わりが存在している。廻り続けるのではなく、自らの役割を終えて美しく消えていく。その姿に、デザイナー・後藤と田中は自らの人生や死生観を重ね合わせたのだという。
散見されたのは、洋服を人体に見立て、命を吹き込んだかのようなデザイン。たとえば、心房や心室のモチーフを襟のデザインに投影したポリエステルのシャツは、今季のテーマを体現したアイコニックなアイテムのひとつだ。
上品な光沢を湛えた優美なキャミソールドレスは、肩ひもの部分が三つ編みの髪の毛のように編み込まれているのがユニーク。そのほかにも、静脈に見立てたシャーリングなど、ルック全体に人体を思わせるディテールが散りばめられていた。
パジャマやガウンといった寝具風のウェアは、「Rest in peace(=安らかに眠れ)」というテーマをそのまま反映させた、ウィットに富んだアイテムだ。パジャマはエレガントなセットアップ、ガウンはシックなコートとして着こなすことで、“部屋着感”を払拭。中にロングシャツをレイヤードするなど、意外性のあるシルエットを組み合わせたスタイリングもまた、シティライクな雰囲気を加速させる。
コーディネートにアクセントを添えるシューズにも注目したい。2023-24年秋冬コレクションのルックにも登場した鹿革のシューズは、デザインをアップデートして今季もお目見え。“輪廻転生からの解脱”を示唆するかのように、本来環状であるはずの履き口の一部が切り取られている。
カラーパレットは、荘厳な雰囲気を演出するホワイトとブラックを中心に、くすんだグリーンやベージュ、ペールグレーなどのニュアンスカラーを織り交ぜているのが印象的。そんな中、ひときわ視線を奪ったのが鮮やかなブルーのパジャマジャケット。彩度の低い世界に差し込まれた強烈な青が、コレクション全体を引き締めるのに一役買っていた。