映画『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』でメインキャストを務めるGACKT、二階堂ふみ、杏にインタビュー。伝説的“埼玉ディス”映画『翔んで埼玉』の公開から約4年半、続編のオファーを受けた時の心境や、豪華キャストとの撮影秘話について、たっぷりと話を伺った。
映画『翔んで埼玉』は、2019年にGACKTと二階堂ふみをW主演に迎え、初実写映画化した作品。架空の埼玉県を徹底的にディスるという衝撃的な内容とは裏腹に、埼玉県民の心に深く郷土愛を刻んだ茶番劇が話題を呼び、史上空前の“埼玉ブーム”を巻き起こした。
2023年11月23日(木・祝)に公開される『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』は、そんな『翔んで埼玉』の待望の続編。舞台を関東から関西へと広げ、“天下分け目の東西ディスり対決”を繰り広げる。
前作『翔んで埼玉』がヒットを収め、続編『翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~』の公開が決定しました。続編のオファーを受けた時の率直な気持ちを教えてください。
GACKT:続編はやめときましょうよって、1回断りました。
そもそも1作目の時も、『翔んで埼玉』が自分のキャリアの汚点になるんじゃないか、それくらいリスキーな作品なんじゃないかと、オファーを受けるかどうか相当悩みました。でもやってみたら運よくヒットして、で、もう1回当たったんだからこれ以上リスクを背負う必要はないですよと答えました。
二階堂:思い出は綺麗なままに。(笑)
GACKT:そうそう。それに、どの作品も2作目を面白くするのは大変です。1作目から既にハチャメチャな『翔んで埼玉』を、続編でさらに盛り上げるのは難しいですよ。
二階堂さんも“続編反対派”でしたか?
二階堂:続編はやめておいたほうがいいと思いました。(笑) 監督が1作目の撮影中に「これは3作目までやるから」っておっしゃっていて。「できたらいいですね~」って大人として話を合わせていたのですが、まさか本当に続編をやることになるとは。1作目はたまたま当たっただけなんじゃないかと思っていたので、正直かなり焦りましたね。
GACKT:いや、あれは間違いなく、たまたまです。
二階堂:さい、たまたま、ですね。(笑)
実際に台本を読んでみて、感想はいかがでしたか?
二階堂:それが、すごく面白かったんです。何より、出てくださるキャストの方々が豪華すぎて驚きました。杏さんはもちろん、片岡愛之助さんと藤原紀香さんの夫婦共演も、むしろ大丈夫なのかな?って。「もう知りませんよ私!」みたいな気持ちになりました。
GACKT:セリフの本読みのタイミングでキャスト全員が揃った時は壮観でした。よくこれだけ豪華なキャストを集めたなと思いました。
たしかに、壮大な茶番劇に相応しい“豪華すぎるキャスト陣”も本作の魅力でした。撮影の中で、他の俳優さんから影響を受けたことはありますか?
GACKT:ボクが「この人すごいな…!」と思ったのは、愛さん(片岡愛之助)。お会いするのは今回が初めてだったのですが、とにかくセリフの強さ、決め方と、その場の締め方が上手くて。演技はもちろん、人柄も本当に素敵で、愛さんと一緒のチームだと全体がすごく良い形でまとまるんです。撮影後も仲良くさせていただいて、今でも月1くらいで食事に行く仲です。
二階堂:初耳です!!いつの間にそんな関係に!
GACKT:ラブラブです。
二階堂:お2人でどんな話をされるんですか?
GACKT:演技の話から、好きなご飯の話まで色々と。現場で聞いて特に印象的だったのは、歌舞伎は台本を覚えてリハーサルに入ってから本番まで2日しかないという話。そんなハードな歌舞伎の世界で活躍しながら、ドラマの撮影も年中並行してやっているわけだから、「ああ、この人には敵わないな」と。
杏さんは本作からの参加となりましたが、『翔んで埼玉』ならではの独特な世界観に戸惑いはありませんでしたか?
杏:戸惑いよりも、作品の世界観に染まっていく楽しさのほうが大きかったです。『翔んで埼玉』は、色々な裏設定なり、衣装やメイクなり、この世界観を成立させるためのディテールがとにかく細かいんです。私自身、衣装合わせやメイクテストを何度も重ねましたし、エキストラの方の衣装も全部マネージメントされていたので、異世界に来たような気分でワクワクしました。
杏さん演じる桔梗魁(ききょう・かい)は、パリ帰りで、滋賀解放戦線のリーダーという役どころ。その独特なキャラクターで圧倒的な存在感を見せていましたが、演じてみた感想はいかがですか?
杏:そもそも私は滋賀の人ではないので、滋賀を代表していいのか、滋賀の人にちゃんと受け入れられるかという不安がずっとあって…。正直今でもちょっとドキドキしています。
あとは、滋賀弁と標準語の使い分けにも苦労しました。元々貰っていた台本は全て滋賀弁だったのですが、撮影の10日前くらいに、身内の滋賀の人と話す時以外は標準語に変えましょうということになって。1回方言を入れて、また抜いて、みたいな感じで、かなり大変でしたね。
前作の時と比べて、地域の広がりだけでなく、登場人物のキャラの濃さもパワーアップしていたと思います。特に印象に残っているシーンや見どころはありますか?
二階堂:桔梗と麗の2人のシーンがあまりに美しくて、怪しげで、とても印象に残っています。魔夜先生の耽美な世界観をそのまま映し出したような…本当に絵になるお2人だなと、観客として惚れ惚れしてしまいました。
杏:私が印象に残っているのは、麗がたこ焼きを食べることで“粉もの中毒”になり、大阪に取り込まれていくシーン。「あれはどうやって撮ったんですか?」って思わず聞いてしまうほど、顔がすごいことになっていて。ちょっと衝撃的な面白さでした。(笑)
二階堂:“粉もの中毒シーン”は爆笑必至でしたよね。
体を張った茶番シーンの中で、現場でアイデアを出されたものはあるのでしょうか?
GACKT:愛さん演じる嘉祥寺晃(かしょうじ・あきら)がボクの胸をまさぐるシーンがあるのですが、あれは“よりエロく”なるよう現場で話し合って決めました。「もっと撫でまわしましょう」「顔にたこ焼きソースをつけるのでそれをなめてみるのはどうですか?」みたいな感じで、おっさん2人で真剣に話をしていました。
茶番シーンに関して、監督はなんと?
GACKT:それが、笑いを取りに行く演技は全く求められていません。だから異様な気持ちです。「自分たちから笑わせにいくと見てる人がしらける、だから演じる人たちは本気でやってほしい、シリアスにやってほしい」って監督からのオーダーです。
なので分からないんですよ。面白いかどうか。
そんなシリアスな演技中でも耐えきれずに笑ってしまうシーンはありましたか?
杏:くっきー!さんのシーンです。(笑)
二階堂:私もアフレコの時、くっきー!さんの所で笑っちゃいましたね。なんでだろう。
杏:佇まいがすでに面白いですよね。
GACKT:くっきー!さんも真剣にやっているんですけど、真剣にやればやるほどふざけてるんじゃないかって。で、監督が来て「もうちょっと真面目にお願いします」と。それがまためちゃくちゃ面白くて。映画のキャラクターとしては成立していても、現場で1番成立していなかったのはくっきー!さんだと思います。
GACKT:でもあれだけキャラクターが濃いからこそ、スクリーンでも絵力の強さが出るんだなと思います。絵力の強い人間を選べる武内監督の能力、やっぱり高いんじゃないですか。