フット ザ コーチャー 2013年秋冬シューズより - ブランドの代表的な定番モデル
イギリスのトリッカーズで働きたいとあちらこちらで話していたら、ある方に工場を紹介して頂けました。その時はとにかくその方や工場に迷惑をかけまいと必死で働きました。失敗しないように、足手まといにならないように。ノーザンプトンではチャーチのデザイナーの家にホームステイしていたので、仕事が終わっても靴談義をするという本当に靴漬けの毎日。毎朝7時前には彼のミニクーパーで一緒に通勤するという生活をしていました。
レディメイド(既製靴)のラインを一通りお手伝いして、その後はビスポークのアシスタント。3日くらいやり方を教わって、その後は実際にお客様の靴を手がけました。その部門は普段、修理の仕事が多かったのですが、オーダー靴が入るとピリッとした空気が流れていました。師匠であるロビンソンは、技術はもちろんのこと人間性も素晴らしく、彼から教わったことは今でも貴重な経験です。
生産工程においては日本の工場と大きな違いは感じませんでしたが、ラインのひとつひとつを見ると丁寧に工程が組まれていて、昔ながらのやり方も随所に残っている。その積み重ねがあの無骨で雰囲気のある靴を生み出すのだと思います。
はい。それまで自分のブランドはスタッフとハンドメイドでやっていたのですが、帰国してからは工場生産に移しました。当時はファッション全体に“手製が良し”とされる風潮がありましたが、トリッカーズで分業制の効率やセクションごとの技術の高さに触れてからはデザインと企画、ディレクションに集中するようにしました。
フット ザ コーチャーとタカヒロミヤシタザソロイスト.とのコラボレーションスニーカー
そうですね、個人でやっているようなブランドからファストファッションのような大きなところまで様々な靴のオファーがあります。それぞれ違った要求で関わり方も異なりますが、靴業界の底上げにつながると信じて、意欲的に取り組んでいます。
コレクション時期が重なったり、オファーが集中すると大変な時もありますね。ただなるべくそうならないように、およそ一年先まではスケジュールを割り振っています。製作が難しいものには十分に時間をかけて検証出来るように、企画によっては3年くらい前から開始します。いただいたオファーに対しては精一杯答えたいと思っています。
人気のブーツシリーズ - フット ザ コーチャー 2015年春夏コレクションより
一括りに言われるとそうですが、デザインに費やす時間よりも現場にいる時間の方が圧倒的に多いです。当然ですが作る行程をしっかりとこなさないと良い靴は出来ません。
携わったみんなのプライドになるようなデザイン、ディレクションをすること。それがみんなのモチベーションに繋がります。
また、スタッフや周りの携わる人との信頼関係が大切です。細かな仕様を逐一伝えて管理するよりも、その人の感性や尺度を用いてさらに良いものに昇華してもらう。そうすることで完成度が上がり、より多くのことに挑むことができます。
ウィメンズブランド - ビューティフルシューズ 2014-15年秋冬コレクションより