クリスチャン ダダ(CHRISTIAN DADA)は、初のパリコレとなる2015年春夏コレクションを発表した。テーマは前シーズンに引き続き「Infinity」。「Infinity」とは「無限」を意味するが、その言葉を逆説的に「無限ではないもの、儚いもの」と捉え、コレクションに投影。2014-15年秋冬は森川の第2の故郷であるロンドンとの決別を表現したが、2015年春夏は日本の儚いもの――とくに桜のモチーフを多用している。その和の世界観に「何年代とかの括りはなく、自分の中のフェティッシュを融合させた」(森川デザイナー)のが、今回のコレクションの骨子だ。
最初に現れたのは、鼻と耳をシルバーのチェーンで繋いだ黒髪のワイルドな男。黒1色のシンプルな出で立ちだが、ノースリーブシャツの胸元には鳥の羽根のような立体的で大きな刺繍が静かにその存在を主張している。3ルック目のライダースジャケットは、片袖が半袖でもう片方は半袖。同じく片方に施された刺繍と合わせて、自由な発想のアシンメトリーが心地良い。栃木県の職人の手による和の雰囲気満点の刺繍は、スーツやホワイトデニムなど様々なアイテムに落とし込まれおり、桜とともに今回のコレクションの核を成す要素と言えるだろう。
ブラック&ホワイトを基調としたコレクションの中で、シルバーのジッパー使いも目立ったモチーフのひとつ。ストライプ状にジッパーを配したレザーパンツやレザーのチューブトップは、強烈な存在感を放っている。
後半には、コレクションを象徴する桜のアイテムが登場する。テーラードジャケット、ライダースジャケット、N3-B、MA-1などのダダらしいアイテムを、境界が滲んだような黒地にピンクの桜のジャカードや、艶やかな桜をプリントしたコットンシルクで製作。桜色(ピンク)のレザーアイテムもあり、モードと日本の侘び寂びの融合に果敢にチャレンジしている。洋に和の要素を盛り込むと得てしてチグハグになりがちだが、森川のソレは違和感なく溶け込んでいる印象を受ける。東京でのデビューショーとなった2011-12年秋冬の「戦国武将」、2014年春夏の「日本の暴走族」と、和洋折衷に真摯に取り組んできた経験の蓄積によるものだろう。
初のパリは公式スケジュールに入れなかったこともあり、「メディアの集客という点で大きな課題を残した」と話す森川。しかし、展示会には世界中のショップ関係者が訪れ、イタリアやアメリカなど欧米で約10件の新規取引先を開拓するなど、まずは順調なスタートを切ったと言えるだろう。今期は海外売上高が全体の7割を超える見込みだという。
Text by Kaijiro Masuda(FASHION JOURNALIST)