映画『ブルーピリオド』が、2024年8月9日(金)に全国公開される。主演の眞栄田郷敦、共演の高橋文哉と板垣李光人の3人にインタビューを実施した。

人気漫画「ブルーピリオド」実写映画化

「マンガ大賞2020」を受賞した山口つばさの人気漫画「ブルーピリオド」が実写映画化される。主人公は、周りの流れに身を任せ、人生を器用に生きてきた高校生・矢口八虎(やぐち やとら)。八虎は、授業で描いた朝焼けの“青の渋谷”の絵をきっかけに、美術の世界に興味を抱き、国内最難関と呼び声の高い東京藝術大学を目指すことになる。美術の経験も才能もない素人の八虎が、情熱と努力だけを武器に、天才的なライバルや答えのないアートという壁に奮闘する姿を描き出した作品だ。

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眞栄田郷敦・高橋文哉・板垣李光人にインタビュー

今回は、映画『ブルーピリオド』で主演を務める眞栄田郷敦、共演の高橋文哉、板垣李光人にインタビューを行った。高橋文哉が演じるのは、八虎が美術部に入るきっかけを作った同級生・鮎川龍二(あゆかわ りゅうじ)。通称ユカちゃんと呼ばれる彼は、女性的な容姿や服装を好み、自分の“好き”に自信を持っているようだが、心の内で葛藤し続けている。

一方、板垣李光人は、八虎が美術予備校で出会う最大のライバル・高橋世田介(たかはし よたすけ)に扮する。天才型の世田介は、努力しか持つ術がない八虎とはウマが合わず、劇中ではふたりが衝突してしまう場面も……。

名場面“青の渋谷”を映像化、3人にとっての“青の渋谷”は？

予告編では、八虎が美術の道へ進むきっかけとなった“青の渋谷”のシーンを見ることができますね。撮影を振り返ってみて、印象に残っていることはありますか？

眞栄田：“青の渋谷”は、実際に夜中からスタンバイして、陽が出る頃に合わせて撮影しました。本当に渋谷が青いんです。上半分は美しいけど、下半分はゴミが多くて汚い。でもこの対比がなんとも言えず、なぜか綺麗で不思議だなと感じながら、自然な気持ちで撮影に臨みました。

高橋：僕も本当に青いんだなと思いました。でもこの景色を生で見られる人は限られていて、八虎が朝まで遊んでいたからこそ見ることができた景色ですよね。自分の見たい景色や風景を絵に落とし込もうとする、八虎の人間としての魅力を感じられる場面でもあると思います。

板垣：“青の渋谷”に浮くシーンは原作でも秀逸だなと思っていて、朝のまどろみの中で浮遊する感覚は、自分もどこか分かるような気がしていました。今回実写化として、渋谷に浮いている八虎の映像を見て、美しさも悲しさもあってすごく素敵だと思いました。

映画は「情熱は、武器だ」がテーマですが、みなさんが高校時代に情熱を捧げたことはありますか？

高橋：自分はバレーボールと料理です。バレーボールは中学から夢中になって、リベロ、セッター、全ポジションやっていました。料理は、専門の学校に通っていたほどで、元は料理人になるのが僕の夢でした。

板垣：仕事ですね。学校よりも仕事していたほうが楽しかったです。仕事以外だと絵を描いていました。授業中とかも回ってきたプリントを裏返して絵を描いたり…(笑)

眞栄田：僕は八虎と同じく芸大受験です。中学から始めたサックスで芸大受験を経験していて、僕の高校生活は芸大受験そのものでした。もう、あの、苦しかった。当時はそれこそ、“努力と天才”みたいなことをすごく考えていましたね。「自分には才能がないな」と感じながら「いや努力するしかねえわ」と思ったり、「いや才能なかったら無理だよ」と思ったり。

八虎を演じてみて、限られた時間のなかで戦う苦しさみたいなものを鮮明に思い出しました。

八虎にとっての“青の渋谷”のように、俳優として生きていくと決意したきっかけや瞬間があれば教えてください。

板垣：僕は、決定的にこの瞬間だ！というのはないんです。芝居を始めて、いろんな現場と関わらせていただくうちに、ずっとこの活動をするのだろうなと感じるようになりました。

眞栄田：初めて出演した映画『小さな恋のうた』のお話をいただいたのがきっかけです。それまでは全くこの世界に入ろうと思っていませんでした。最初は、できないことに対する悔しさから始まりました。

多分、八虎もそうなのかなと思っているのですが、八虎は器用でいろんなことができるけど、美術は最初、結構下手くそじゃないですか。だから、それに対する悔しさも最初はあったのかなと思っていて。僕も同じ。でも、どんどんやりがいを感じて、やめられなくなっちゃったという感じです。

特に悔しかった作品はありますか？

眞栄田：今作の監督、萩原さんが演出をなさったドラマ「あと3回、君に会える」です。出演させてもらった際は、死ぬほど悔しい想いをしました。

そのとき、役者のことや芝居のことについて書かれた本を貸していただいて、わざと借りパクしていたんです。(笑) 次に出会って、自分も萩原さんも納得できる作品ができあがったときに返そうと思って。無事、『ブルーピリオド』のクランクアップの時に返すことができました。ちなみに本のタイトルは秘密です(笑)

高橋：先ほど少し触れたのですが、僕は元々、料理人になるのが夢でした。当時は、料理人として生きていくのだろうと思っていましたが、デビュー作となる仮面ライダーで合格をいただいて、そこから僕の役者人生が始まりました。なので、最初は役者として生きていくだろうな…とは思っていなかったです。

ただ、少し経って放送が始まると、自分に輝くような目を向けてくれる人がいることに喜びとやりがいを感じて、一生この仕事をしていきたいって思うようになりました。

印象的なエピソードがありそうですね。

高橋：スーパーで出会った7歳の男の子がいたんです。最初、お母さんだけが自分に気づいてくれて、僕が帽子を脱いだら、「あ！」と言って飛びはねて喜んでくれました。嬉しさと同時に責任感みたいなものも感じて、あの瞬間に頑張る意味を見つけた気がします。

板垣：視聴者の存在って本当に大きいですよね。僕もNHKのドラマ「ここは今から倫理です。」で、精神的に色々抱えている役を演じたときに、同じような境遇の方からいただいたメッセージは印象に残っています。作品は人の心を動かせる、自分はそういう人たちと作品を演技で繋げる立場でもあるんだな、と実感しました。

顔面が変わる！？眞栄田郷敦の新たな強み

俳優として、みなさんの強みは何ですか？

板垣：水みたいなところが強みかな。良いのか悪いのか分からないですが、基本的に何も決めずにいきたいなと思います。

眞栄田：言ってることわかる！

板垣：目標とか決めるのもすごい苦手です。決めたとして、どうせ人間って形が変わってくるから、多分同じ形に到達できないので、だったら始めから何も決めずに、そのときそのとき出会うものであったり、吸収していくものであったり、その瞬間を大事にしたいなって思っています。

眞栄田さんは以前のインタビューで、自分の強みを「プライドがないところ」とおっしゃっていましたが、今も変わっていないですか？

眞栄田：プライドはないですね。ただ、今強みは？って聞かれてぱっとそれを答えるかっていうと、ちょっと変わってくるかもしれない。

ずばり、新しい強みは？

眞栄田：うーん、顔面が変わることですかね。

顔面が……？

眞栄田：顔面が変わるんですよ。髪だったり衣装だったりで、もちろん雰囲気は変わると思うんですけど、僕は気持ちで顔面が変わるんです。“顔つき”とかじゃなくて“顔面”が。

実写化作品にはもってこいですね。

眞栄田：いや、この顔面にしたいな～と思って変えているわけじゃないですよ(爆笑)でも、この映画の中でも、冒頭の八虎と受験中の八虎は顔面が違うと思います。演じる役や時期によって違ってくるので自分でも不思議なんです。

高橋：ちなみに、現場の郷敦さんが放つ空気感はすごいんです。何も寄せ付けないというのとは違って、パワーのオーラがあります。それを感じ取ったときに、彼についていきたいと思わせる背中の持ち主なので、自分もより一層エンジンがかかりました。

そこに存在するために、高橋文哉の努力

高橋さんはどんなところがご自身の強みだと思いますか？

高橋：僕は、そこに存在するための努力を惜しまないことです。 役をいただいた瞬間に、その役がそこにしっかりと存在するために何をすべきか、自分で考えて実行することがとても楽しくて好きなんです。そのための努力は惜しみません。

それは自分自身にも置き換えられていて、たとえば主演のときは、主演としてそこにいる説得力を持たせるために今自分が何かをするべきなのか？などを常に考えています。どこに熱量を持って生きていくのが今の自分に1番あってるのかな、と。

映画『ブルーピリオド』では、ユカちゃんが存在するために何をしましたか？

高橋：可愛くなりたいという感情を持ったのは初めてで、撮影期間は、女の子がひとりで旅しているVlogや、美容ルーティーンばかりを見ていましたね。

形から入ろうと思ったら結構面白くて、こんなことやったら次の日こんなに肌ツヤが変わるんだ…とか。(笑)自分の体をすごく理解できた時期だと思います。

8キロほど減量されたとのことですが、中でも気合を入れたシーンはありますか？

高橋：僕がクランクアップを迎えた日に撮影した、とある場面です。本当にこのシーンのために体作りを頑張っていました。3日前ぐらいから体に入れるものに気をつけていて、そこまで自分を追い込んだことがなかったので、なんだか気持ち良かったですね。(笑)