映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』が2024年12月20日(金)より全国公開される。主演を務める松山ケンイチと染谷将太にインタビュー。
中村光の漫画「聖☆おにいさん」は、神の子イエスと、仏の悟りを開いたブッダが地球という下界でバカンスを楽しむ姿を描いた日常ギャグコメディ。Tシャツにデニムというイエスとブッダのカジュアルな恰好や、現代日本の姿に言葉通りのカルチャーショックを受ける様子など、シュールな展開が魅力だ。そんな「聖☆おにいさん」が、『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメン VS 悪魔軍団~』として初の実写映画化。2人が地球を救う大波乱の展開を繰り広げる。
◆見どころ1:豪華キャスト
福田雄一監督のもと、イエス役の松山ケンイチ、ブッダ役の染谷将太をはじめ、豪華キャスト陣が集結。岩田剛典、白石麻衣、仲野太賀、神木隆之介、窪田正孝、佐藤二朗、賀来賢人、ムロツヨシなどが出演する。
◆見どころ2:“聖なる存在”が入り乱れるハチャメチャ展開
イエスとブッダの神・仏だけでなく、守護神、天使、軍神、女神、仙人、そして天使・悪魔なども登場。聖なる存在が入り乱れる、波乱の展開に注目だ。
◆見どころ3:アドリブ合戦
演者が思わず笑ってしまう、高度なアドリブ合戦は福田監督作品ならでは。インタビューでは、現場での撮影秘話にも迫る。
『聖☆おにいさんTHE MOVIE』は、イエスとブッダが繰り広げる“日常ギャグコメディ”。作品の独特な世界観に戸惑いはありませんでしたか?
松山:もちろん戸惑いだらけですよ。特に今作は、ヨハネやらミカエルやらいろんな神様が暴れていてもうカオスでした。多方面から怒られるんじゃないかと心配でたまらないのですが、プロデューサー陣は「宗教監修を入れているから問題ない」って言い張っているので。その話も本当か怪しいですけど、大丈夫だと信じたいです。
染谷:怒られるのが心配なのは僕も同感です。
松山:最終的に何かあったらプロデューサー陣が怒られる話だと思って、もう諦めてます。
“クセ強キャラクター”だらけなのは、福田監督作品ならではですよね。
染谷:出ている人みんなが“どうかしちゃう”というのは、福田監督の作品あるあるだと思います。
松山:ある意味本当に厳しい現場だと思う。 道筋はあるにはあるけど、歩き方はめちゃくちゃで、面白ければそのまま進んじゃうみたいなところがあるから。でも、そういう経験をしたいってみんなに思わせる魅力はすごくあるよね。
やはりアドリブシーンだらけだったのですか?
松山:“アドリブ合戦”でした。特に印象に残っているのが、ミカエル役の岩田くん(岩田剛典)。彼、台本に書かれてあるものと全く違うものを持ち込んできたんです。
染谷:1番最初、踊り出してましたよね?(笑)
松山:そうそう。台本には踊るなんて一言も書いてなかったのに。最終的にはラップを披露していてもう訳が分からなかった。
染谷:いきなりアドリブが始まったので、2人とも吹き出しちゃいました。
松山:「あれ、こんな台本だったっけ。全然違くない?」と思いつつ、一応岩田くんの顔色を伺ってみたら「当然です。」みたいな顔をしているし、福田監督もそのまま進めているし。
田舎に拠点がある僕からすると、今の俳優さんってこれがスタンダードなのかと思ってびっくりしました。「ここまで台本変える!?」というのと、「ここまで表現できるんだ!」というのと、Wの衝撃。自分は古くなっているかもしれない、出遅れているかもしれないと思って、すごく悩みました。
その岩田くん大暴れのシーンには白石さん(白石麻衣)もいたのですが、白石さんも普通に進めてたんですよね。「え、これで合ってますけど。あんたらがおかしいんだよ。」みたいな感じで。戸惑ってるのは僕と染谷くんだけだった。
染谷:(笑) 台本はあってないようなものでしたよね。スクリーンには、動揺して笑っちゃってる我々がそのまま映っていると思います。
岩田さん&白石さん以外にも、衝撃的なシーンはありましたか?
染谷:濃い皆さんが現場に来ては動揺する日々を過ごしていたのですが、中でも僕が驚いたのは、神木くん(神木隆之介)が「ホーリーメン来ませり~」って登場するシーン。なぜかずっと「あ~~~~~”」って奇声を発していて、知らない神木隆之介を見たなって。
松山:窪田くん(窪田正孝)も相当やばかったよ。「えいマトリックス~」とかなんとか、ずっと変なこと言ってた。女子ーズとして登場した田中さん(田中美久)さんも、台本に無いのにいきなり「クソが!」って吐き捨てていたし。台本を超えてきているのか、無視しているのか…こんなに色々やっていいんだってすごく勉強になりました。
福田監督の作品には台本を変えるしきたりがあるのでしょうか?
松山:いや、分からないです。僕らだけ台本通りです。(笑) みんな緊張しているはずなのに、なんであんなに台本変えられるんだろう。
染谷: 仲野太賀とかも「どうしよう、今回どうしよう」とか言いながら、本番が始まったら当たり前のようにふざけていました。二朗さん(佐藤二朗)に至っては、全く台本なかったですからね。台本にあったの1セリフくらいかな?
佐藤二朗さんの場面、おふたり普通に笑っていらっしゃいましたね。
染谷:完全に素の我々でした。
松山:こんなに台本通りじゃないのに、よくこの映画90分にまとまったよね。聞くところによると、16分間二朗さんのシーンらしいよ…。
染谷:16分もあるの…。(笑)
松山:1割以上二朗さんに使っちゃってるのよ。恐ろしい。
松山さんのイエス役、染谷さんのブッダ役は“神キャスティング”と言われるほどぴったりですよね。
松山:衣装やメイクのおかげです。漫画の実写化でビジュアルをどこまで追求するのかってかなり大きなテーマになるかと思うのですが、いばらの冠だったり髭だったり、メイクさんや特殊メイク部の皆さんが作り込んでくれた扮装がなんとも絶妙なんです。
染谷:いやいや、逆に冠と髭だけであそこまでイエスになれるのがすごいんですよ。(笑)
松山:染谷くんも、カツラつけて福耳つけたらブッダのまんまだよ。それに染谷くん、全てを見透かすような目をしているじゃないですか。喜びも怒りも悲しみも笑いも包み込んでくれるような、本当に仏様のような雰囲気があるからすごいなって。
染谷さんはオーラから“ブッダっぽい”と。
松山:はい。染谷くんの元々の性質なのか、経験値から来るものなのかは分からないですが、どんなにカオスな現場でも、彼はいつも動じずドシっとしているんです。僕はどちらかというと内心ビクビクしているような弱気な人間だから、そういうところはすごく憧れます。きっとプライベートでも、ブレずに一定の精神状態でいられる人なんだろうなって。すごい大人な感じがするんですよね。
染谷:自分もすごく緊張しいな人間なんです、実は。
松山:それが見えないんだよね~。
染谷:松山さんこそすごく自然体で現場にいらっしゃるので、自分もリラックスして“ブッダらしく”撮影を楽しめたというのもあります。松山さんとは初めてお会いした時から、なぜか昔から知っているような感覚で、すごく居心地がいいんです。
染谷さんは子役から、松山さんも20年以上俳優として活躍されてます。これまでの俳優人生で“ターニングポイント”はありましたか?
染谷:自分は、中学生の時に出演した『14歳』という作品がターニングポイントです。小さい頃から映画を観るのは好きだったのですが、『14歳』は自分が触れたこともないような世界観の作品でした。「映画ってこういう作品もあるんだ」と衝撃を受け、そこから色々なジャンルの作品に参加してみたいという気持ちが芽生え始めていったんです。『14歳』は、演じることを“職業”にしたいと思うきっかけの作品でした。
松山さんはいかがでしょう?
松山:僕は大河ドラマ「平清盛」ですかね。1つの役を長い時間かけて、死ぬまで演じるのは初めてだったので、すごく悩んだし、それまでのやり方と変えた部分もたくさんありました。たとえば、セリフ量が多いので書いて覚えるようになり、それはいまだに続けています。あとは演技の組み立て方も、大河ドラマの経験から少し変わった気がしますね。
演技の組み立て方、と言いますと?
松山:感情表現をするということと、それを記号として見せることを意識するようになりました。
いくら自分が感情を込めて表現しても、伝わらなかったり、理解されないことがある。それは表現力の乏しさゆえだと思うのですが、それを補うために、“もう少し違う表現の仕方をして、見やすくする”みたいな。ただ自分の感情を爆発させる「主観的な表現」から、観ている人に伝わりやすい「客観的な表現」を徐々に心掛けるようになりました。