MSGM(エムエスジーエム)のマッシモ・ジョルジェッティは、今イタリアでもっとも飛躍が期待される若手デザイナーのひとり。デザイナーと並行してDJもしているから、音楽に対する造形が深く、「コレクションの製作はいつも音を決めることから始める」という。2015-16年秋冬メンズ・コレクションの音は、ビースティボーイズの「INTERGALACTIC」。その曲名から想像するとおり、宇宙にまつわるあれこれからインスピレーションを受けているのだ。
音が会場に鳴り響くと同時に、ランウェイ中央に設置された横長のスクリーンには宇宙空間が映し出される。スペースシャトルに乗って宇宙を旅しているようで、一気にマッシモが創造した宇宙空間に引き込まれる。やはり目立つのは、星、星座、ロケットなどのモチーフだ。ライトグレーのウール素材のシャツとパンツには、星座のプリントが施されている。同じくライトグレーのチェスターコートには、大きな星の切り替えが。グリーンのGジャンや幾何学柄のセーターには、色とりどりのロボットのワッペンが張り付けられている。宇宙服を思わせるラバーっぽいコーティングのブルゾンもある。
アイテムでは、Gジャンとデニムをアレンジした提案が目立つ。多くのルックで使われたジーンズは、裾が切りっぱなしになったワイドシルエット。70年代のヒッピー調であり、これまでのMSGMとはやや趣が異なる1本だ。洗いをかけた淡いピンクのベルベット素材や生デニムのGジャン、5ポケットパンツのセットアップや、レザーのGジャンもある。Gジャンにオーバーオールを合わせたルックは、ロケットの整備士をイメージしたのだろうか?
MSGMのシグネーチャーになりつつある人気のステンカラーコートは、淡いピンクやグリーンのブークレー、絨毯のように毛足の長いフェイクファー、ヒョウ柄のフェイクファーなどの表面感のある素材で提案。カラーパレットはブラック、グレー、ブルーを中心に、オレンジ、ペールトーンのピンク、グリーンを挿している。
これまでのMSGMの品のあるポップさを踏襲しつつ、デニムを中心としたアメリカのワークテーストを上手く融合させたコレクションだ。
Text by Kaijiro Masuda (FASHION JOURNALIST)