ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)は、展覧会「旅するルイ・ヴィトン」を東京・紀尾井町(麹町)で開催する。期間は2016年4月23日(土)から6月19日(日)まで。入場は無料だ。
バッグやシューズ、ウェアといったファッションアイテムで名をとどろかすルイ・ヴィトンだが、そのルーツは旅行鞄にある。1854年、フランス・パリ。シャルル フレデリック ウォルトがオートクチュールを始めた同じ頃、創業者のルイ・ヴィトンは、自らの店を構えた。頑丈でありながら軽く、機能的。現代のラゲージのはじまりに通ずる彼の製品は、輸送手段の進化と旅の一般化という時代の変化とともに発展していった。
本展では、10章にわけて、ルイ・ヴィトンの軌跡をたどる。アーカイブピースとともに、‟その時代を生きた”洋服、ポスター、また最新コレクションピースも同時に展示し、ブランドの世界観を体現する。
ファッションプレスは開催に先駆け、本展を取材。各章ごとに展示内容を紹介する。
■1. 1906年のトランク・革新的なデザイン
入り口では、創業者のルイ・ヴィトンの大きな肖像画とともに、彼の経歴を紹介。「旅のスペシャリスト」と呼ばれるメゾンの起源にふれることができる。また歩みを進めると、1906年のトランクが当時の状態のまま存在し、来場者をあたたかく迎えてくれる。
■2.木材―自由へのパスポート:ルイ・ヴィトンの原点
2章では、トランク製造に必要な素材の中でも、メゾンに縁のある木材に着目。会場中央には、ルイ・ヴィトンの製品を創る木工用具を配置した。木で覆われた壁面には、創業時の工房をとらえた写真を飾り、ディスプレイには、手書きの紋章スケッチを並べた。
また、壁面に書かれたテキストを読むと、木造製造を営む家に生まれ、自身もその知識を活かし、荷造り用木箱製造兼荷造り職人となったという創業者の人生にふれることができる。
■3.クラシックなトランク:洗練されたキャンバス、シェイプ、ロック
帽子用・書類用・化粧箱など、様々な高さ・大きさのトランクを揃えた3章では、製品のバリエーションの豊富さとクリエーションの幅の広さに気付かされる。また、今なお愛されるモノグラム・キャンバスやダミエ・キャンバスなどのアーカイブピースに出会えるのも魅力だ。
■4.旅の創造
1830年に熱気球、1848年に鉄道、1890年に自動車、1900年に民間航空機…。輸送手段の発明と発展にともない、旅はより身近なものに。4章では、この転換期にフィーチャーし、アーカイブアイテムとともに、その時代を探る。会場はヨット、自動車、列車、航空機をアイコンに、大きく4つのパートに区切った。
<ヨット>
中央にヨットの帆を飾り、広大な空と海を映した画を背景にしたセクション。豪華客船でのクルーズが一つの流行となったその時代に、旅行者の助けとなったのが「スティーマー・バッグ」。折りたたんで収納できるため、旅の終わりまで着用済の衣服を入れておくことができる。この利便性が受け、海の旅人の必須アイテムとして発展する。
会場には同時の「スティーマー・バッグ」と一緒に、当時の女性たちが好んで纏ったサマードレスも展示し、船旅の雰囲気を伝える。
<航空機>
大きな航空機モニュメントを飾ったエリアでは、コットンキャンバスのバッグ、モノグラム・キャンバスのスポーツバッグなどを並べ、旅人のため、より軽量化を求めたクリエーションの姿勢を感じさせる。
1910年代の熱気球やパイロットのスケッチ、ルイ・ヴィトンによる単葉機の模型とともに、2015年の新作バッグを‟浮遊している”ようにディスプレイし、創業時のスピリットが現代も続いている様子を香らせる。
<列車>
列車の中をイメージしたこのエリアでは、車窓に見立てたスクリーンに、田園風景やすれ違う列車を映し、旅のワンシーンを再現する。反対側の壁面には、当時発行された多種多様なステッカーや広告を並べて、情緒あふれる空間を演出した。
■5.余暇の時間:ルイ・ヴィトンの書の美学
書斎のような重厚感あふれる空間では、旅と同時に書くことにも愛を注いだ創業者ルイ・ヴィトンと孫のガストン・ルイを紹介。書籍用のトランクやライティングセットなどを並べ、ガストンによるモノグラムのスケッチやブランドのイラストなどもディスプレイした。
また、2000年に登場した「モノグラム・グラフティ・キャンバス」グッズも揃え、モノグラム・キャンバスの現代的解釈もみせていく。
■6.絵画用トランク:アートとの対話
これまで続いたクラシカルなムードからは一変、鮮やかな色彩が飛び交う6章。村上隆とともに完成させた作品を並べ、ブランドとアートとの関係性に迫る。
■7.一風変わった、興味深いトランク:ガストン・ルイ・ヴィトンによるアンティーク コレクション
7章では、ガストン・ルイがこれまでに集めたアンティークコレクションを壁面いっぱいに並べ、彼の趣味を体現する。革と毛皮をあわせたもの、刺繍やスタッズを施したものなど、トランク、チェスト、ケースそれぞれに表情があり、あらゆる角度から美しいものを探し求めていたことが伝わる。
■8.ファッションとビューティー
8章では、4つのゾーンに分けて、メゾンと切り離すことのできないファッションとビューティーの関係性を紐解いていく。
<フレグランスの誕生>
1927年、ルイ・ヴィトンにとって初となるフレグランス「ウール・ダプサンス」が生まれた。その名は、ヴィトンが所有する別荘にちなんでつけられたもの。その後、1928年、1946年と新しい香りが仲間に加わり、ビューティーの面からも「日々の生活を豊かにすること」へのアプローチが始まる。ここでは、瓶のスケッチ、鳥やバレリーナを描いた装飾瓶を並べて、その時代を感じさせる。
<セレブリティとの関係性>
スーパースターの登場は、メゾンの発展に大きな力を与えた。輝かしい彼女たちが身に付けたナイトガウンやシューズとともに、アーカイブコレクションのジュエリーケースや香水瓶ケースを揃え、華やかな世界観を表現する。
<メンズ・ラゲージ>
一方で、男性社会でもファッションは重要なキーポイントであった。クリスチャン・ディオールやポール・ポワレなど、ファッション界のスターがオーダーメイドで作ったラゲージを展示。
<現代のクリエーション>
ここでは、アーカイブバッグとともに、2016年クルーズ・2015年春夏のコレクションピースを紹介。ショーの様子をスクリーンで流し、アーカイブから着想を得てクリエーションを続ける、アーティスティック・ディレクターのニコラ・ジェスキエールの製作姿勢も体感させる。
■9.ミュージックルーム:夢の形にするスペシャルオーダー
ギターやレコードを並べたボップなゾーンでは、楽器の形にあわせて作られた特別なケースに注目。ヴァイオリンや指揮棒など、それぞれのフォルムにフィットするデザインは、メゾンのクラフツマンシップの高さを感じさせる。
■10.インスピレーションの国、日本
本展は、紀尾井町、平河町、麹町、番町に囲まれた由緒ある地区に設置された特設会場で行われる。日本での開催を記念した最終章は、和の文化を感じさせるスペシャルな空間が広がる。障子、畳、茶器など、日本文化を象徴する品々とともに、コム デ ギャルソンや川久保玲、草間彌生とのコラボレーションによって生まれたバッグを展覧。
また、アーカイブピースからは板垣退助が所有した「スティーマ・トランク」という珍しいものも揃い、長きにわたり深めた、メゾンと日本との関係性を体感することができる。
■アトリエ職人によるクラフトマンシップを体感ゾーン
本展の締めを飾るのは、クラフトマンシップの体感ゾーン。本国からアトリエ職人が来日し、デモンストレーションを行う。会場に設けられた3つのスクリーンでは、職人の手元をクローズアップ。細やかな手さばきや繊細な技を映像を通して伝えていく。
取材時には、キーケースやウォレットなどスモールレザーグッズで用いられる、レザーパーツを製作。会期中、何度か内容を変更しながら、職人技術を紹介する。
【詳細】
Volez, Voguez, Voyagez – Louis Vuitton
空へ、海へ、彼方へ ─ 旅するルイ・ヴィトン展
期間:2016年4月23日(土)~6月19日(日)
場所:東京都千代田区麹町5丁目「旅するルイ・ヴィトン展」特設会場
時間:10:00~20:00
※6月17日(金)、18日(土)は22:00まで。(最終入場は21:30)
※月曜日休館(但し 4/25、, 5/2、 6/13は 13:00~20:00 開館)
入場料:無料