アニメーション版に登場したすべてのミュージカル・ナンバーを起用。オープニングは、アカデミー歌曲賞にノミネートした「朝の風景」から。エマ・ワトソン演じる主人公ベルが朝の町を歌いながら歩き、パンを手に取り馬に果物を上げ、人々と会話を繰り広げる。豊かな歌声で描き出されるのは、明るいベルのキャラクターと物語の舞台だ。
実写版から加わる新曲は3つ。野獣の住む城の住人たちがかつての思い出に振り返りながら歌うナンバー「デイズ・イン・ザ・サン~日差しをあびて~」、ベルに向けた野獣の切ないバラード「ひそかな夢」、ベルと父との過去が明かされる「時は永遠に」。どれもストーリーとキャラクターに深みを与える役割を担う。
また、アニメーション版でセリーヌ・ディオンを一躍歌姫の地位へと送り出した主題歌『美女と野獣』は、歌い手をアリアナ・グランデへバトンタッチ。キュートなルックスからは想像できない声量と歌唱力でよりドラマティックに作品を盛り上げる。デュエット相手は、ジョン・レジェンドだ。
もちろん、アニメ版からの楽曲も再現されている。例えば「愛の芽生え」。映画の中で唯一のベルと野獣のデュエットソングで、ベルと野獣が互いの内側に秘められている輝きを見出し、それに惹かれる自分に気づき始める様子を描いたミュージカルナンバー。ファンの中にはこの場面が好きな人も多いはす。
アニメーション版でも雪合戦のシーンが盛り込まれているが実写版で異なるのが大きな雪の塊をベルの顔に豪快にぶつけるという思わず笑ってしまう印象的なシーン。当時の撮影についてエマは次のようにコメントを残している。「ものすごく巨大な雪の塊だったわ!実はあのシーンを撮影するのは大変だったのよ。というのも、小道具のアシスタントが私に雪を投げるという仕事をあの日担当したんだけど、私がいた場所がすごく高い位置だったから、私のところまで雪を飛ばすのがすごく難しかったの。私に当たるまでに13回くらいは投げなくてはいけなかったのよ」とエマの体の張った演技だったことを明かしている。
またダンは「このシーンは、関係が変化しふたりで楽しみ始めるようなシーンだからね。でも、野獣が大きすぎる雪の塊をベルの顔に投げて、少し楽しみ方を勘違いしてしまうんだけどね(笑)」と野獣の心境を代弁した。
色男ガストンとその子分、ル・フウの絶妙な掛け合いが楽しい楽曲「強いぞ、ガストン」も、アニメから再現されている。
この楽曲は村のスターであるガストンを称える曲。セクシーかつハンサムな見た目と剛腕さから皆に一目置かれ、村の娘たちの心をつかむプレイボーイであることを表現しながら、その反面うぬぼれやで卑怯な顔もあることを伺わせる歌詞が流れ、この一曲でガストン、ル・フウ、そして村人たちの関係性が理解できる、優れた楽曲の一つだ。
『美女と野獣』の撮影は、3か月に渡ってイギリスの各地で行われた。ベルの家、校舎、婦人服店、教会などが並ぶベルの住む村は、ディテールにまでこだわり再現されている。中でも、「まさにあのお城だ」と感動させられるのは、野獣の城だろう。何か月にもわたるリサーチを重ね、ベルと野獣が距離を縮める図書室、魔法のバラを隠し置く西塔が個性豊かに表現されている。
オスカー受賞者の衣装デザイナー、ジャクリーヌ・デュランが村人たちの素朴な衣装から、舞踏会で踊る娘たちのドレスまでデザイン。中でも、最大の挑戦となったのは、ベルのイエロードレスだ。物語の中で印象的なこのドレスは、アニメーションへのオマージュとして黄色いカラーがポイント。「踊った時に最も美しいドレス」を目指し、オーガンザとスワロフスキーを組み合わせてプリンセスドレスを完成させた。
また、愛すべきキャラクターたちが実力派キャストで蘇るのも実写版の醍醐味。『美女と野獣』を盛り上げるキャラクターたちを演者と共に紹介する。
ベル:エマ・ワトソン / 吹き替え声優:昆夏美
受動的なヒロインの殻を破り、自ら行動を起こすヒロインとして熱い支持を集めた主人公のベル。演じるのは、「ベルは独立心旺盛で自分の目で世界を見たいと思っている」とベルへの思いを語るエマ・ワトソンだ。
撮影中はビル・コンドン監督と話し合いを重ね、現代に生きる私たちの心へ訴えかけるベルを作り上げた。外の世界に出て人生を謳歌したいと情熱を持ち続ける、ベルの心を表現したエマ・ワトソンの歌声にも注目。
野獣:ダン・スティーヴンス / 吹き替え声優:山崎育三郎
呪いによって野獣に変えられた美しく傲慢な王子。孤独の中で心を閉ざす男の姿は、物語の情感面で中心の担う存在である。今回はダン・スティーヴンスが、”獣の中に人間が囚われている”という複雑な心を切り取る。映像テクノロジーを使った、キャラクター再現法も見どころの一つ。
ガストン:ルーク・エヴァンス / 吹き替え声優:吉原光夫
ベルとの結婚を心に決める、村一番のプレイボーイ・ガストン。アニメーション版から多くのファンが存在する、どこか憎めないその悪役は、『ホビット 竜に奪われた王国』のルーク・エヴァンスが務める。