ヴェトモン(Vetements)は、2019年春夏コレクションを発表した。
レイヤードやパッチワークによって、組み合わせられていく様々な要素。継ぎ接ぎにした部分を隠さずあえて見せていく姿勢に、大胆さやアグレッシブさが見て取れる。グラフィック、フォルム、カラーをフレキシブルに組み合わせ、“服”に具現化させていく。そうして出来上がった服は、“存在”“肌”“アイデンティティー”の意味合いを一度フラットにし、「本当にそうなのか?」と問いかけるような表情を見せた。
実際にタトゥーを入れているかのように見える、ヌーディーなグラフィックカットソーは、オリエンタルな絵柄とタイ語のようなフォントが目に留まる。限りなく肌に近いが、肌ではない“服”にタトゥーを彫ることで、“これはフェイクだ”という事実と、図柄の余韻がより一層印象的に残されていく。
服による“肌”の表現があったかと思えば、顔をマスクで覆ったルックも散見された。ハードなレザージャケットやスポーティーなトラックスーツ、ミリタリーテイストのベストにカーゴパンツのスタイリングなど、身に着けているウェアは様々だが、顔が覆われているという点に意識が向き、隠されているからこそ気になってしまう、ミステリアスな存在感を感じさせる。
国旗のモチーフを大胆にデザインに落とし込んだジャケットも登場。アメリカの星条旗をはじめ、トルコやスイスなど、服として見てみると、改めて国旗の色彩の鮮やかさとモチーフのポップさ、ユニークさに気付く。それは、国旗としてではなく服として提示された時、モチーフに象徴される意味やアイデンティティーが一度フラットな状態に戻るからだろうか。
ショルダーを大きく仕立てたテーラードジャケットやロングコートは、大胆なフォルムでありながら、自然に身体へと馴染んでいる。まるで、人間の肩幅が本当に服に適応しているかのように、その仕立ては端正だ。オーバーなフォルムに見慣れた頃に、タイトなカットソーを着たモデルが不意に登場。瞬時に人間の身体の造形を思い出し、服と身体の本当の境目に気が付く。