アンダーカバー(UNDERCOVER)は、2020年春夏メンズコレクションを、2019年6月19日(水)にフランス・パリで発表した。
ダブルブレストのジャケットにタイトなパンツといった、べーシックなセットアップで幕を開けた今シーズン。これまでのシーズンに見られるような、明るいカラーやグラフィックを多用したポップなスタイルとは打って変わって、ブラックやグレーなどのダークカラーをベースとした、静かなルックが続いていく。
キャッチーでユニークなモチーフも、ダークトーンの中に投じられた。艶やかなシャツやショールカラーのジャケット、ロングコートのバックには、プリーツで表現した蜘蛛の巣があしらわれている。
また、パッチワークで表現した、顔の見えない人物の陰影も多用されたモチーフだ。服地とは異なる質感の生地を組み合わせて立体的に見せたパンツや、敢えて全て同じ生地で統一することで、より一層ミステリアスな雰囲気を増すグレーのロングジャケットなど、闇の中にぼうっと浮かび上がる影を思わせるデザインは、シンプルなギミックではあるが思わず目を留めてしまう。
バッグにあしらわれたパッチワークは、チャームとポーズが連動。さりげない遊び心を覗かせた。
図像は、異なる配色のパッチワークやステッチ、転写によっても表現された。モチーフとして使用されたのは、アメリカの写真家・シンディ・シャーマン(Cindy Sherman)による、映画のワンシーンを切り取ったようなセルフポートレイト「アンタイトルド・フィルム・スティル(Untitled film stills)」。
もやがかかったように暗めのトーンで少女や女性の写真を配したシャツやレザージャケット、モノクロ映画のごとく明確にバックプリントを配したシャツ、像がはっきりしない抽象的なグラフィックプリントのロングジャケットなど、そのトーンや手法は様々だ。チャコールグレーのジャケットやコートにあしらわれた図像は、生地の質感も相まって砂嵐がかかっているようにも見える。
ステッチとパッチワークを組み合わせ、絵画のようなタッチでグラフィカルに表現したピースも登場。丈の短いトレンチコートのバックには、長い髪で顔の見えない女性の像をパッチワーク。ウエストに巻いたベルトによって、背中に縛られているように見える。
また、図像を描き出す手法としてのパッチワークのみならず、異素材の切り替えは多数見受けられたディテール。ニットと薄く軽やかな素材を切り替えたトップスや、光沢のあるレザーとグレーの布地を張り合わせたボンディングジャケット、鮮やかなブルーの生地と、マットなブラック、ネイビーの生地を繋ぎ合わせて仕立てたMA-1ジャケットなどを展開する。ブルゾンの裾のリブニットは、身頃から少しずらして配され、レザージャケットには裾よりも上の位置にリブを配置。シンプルではあるが、生地の配置にユニークさが見て取れる。