エンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)の2025年春夏メンズコレクションが発表された。
今季のエンポリオ アルマーニのテーマが、「自然の中で解き放たれる心」──都会という閉ざされた場所から離れて、野原、丘陵、ラベンダーや小麦の広がる畑、浜辺など、どこまでも広がる自然の自由さに誘われたそのコレクションは、柔らかく軽快、流れるような佇まいを示している。
たとえば、テーラリング。ノッチドラペルのシングルブレストジャケットやピークドラペルのダブルブレストジャケット、ショールカラージャケット、ノーカラージャケットなど、多様な種類で展開されるテーラードウェアは、ショルダーを幾分ドロップさせ、Vゾーンを深めに設定して重心を下げることで、抜け感のある雰囲気に仕上げた。
このように都会的なテーラリングが軽快な佇まいへと昇華される一方、伸びやかな自然の雰囲気を感じさせる、カジュアルな装いもまた、コレクションの軸のひとつとなっている。随所にダメージ加工を施し、風の行き交うようなホールを散りばめたデニムジャケットやデニムパンツ。サファリジャケットを彷彿とさせる、ポケットやベルトをあしらったアウター。ざっくりと編みあげたニット。あるいはパッチワークで仕上げたブルゾンなどを、その例に挙げることができるだろう。
ところでこのコレクションにおいて、都会から自然へと誘う役目を担うのが、馬であるという。ジョッパーズパンツが多用されているのは、こうしたストーリーを背景としている。裾にボタンやファスナーをあしらい、ボリュームのあるテーパードシルエットを作ることで、風に波打つようなボリューム感を作りだしているのだ。また、ウエストにはフラップをあしらうなど、アウトドア的なディテールを重ねている。
柔らかく流麗な今季のエンポリオ アルマーニの雰囲気を支えているのが、軽快な素材だろう。軽やかでありつつ上品な光沢を帯びたシルクウール、清涼なリネンやヘンプなどを用いつつ、さらりと流れるような、風を心地よく孕むシルエットを生んでいる。また、ジャケットなどに用いたスエードなど、自然の手触りを強く感じさせる素材も見受けられる。
カラーは、リラクシングな自然の中にいるかのように、穏やかで心地良い。軽やかなベージュやグレー、ブラウンなど、大地を思わせる色味を軸に、草木を彷彿とさせるライトグリーンやモスグリーン、ラベンダーをはじめとする花々を集めたかのようなパープルやイエローなどを取り入れた。また、ニュアンスに富んだ色彩を際立てるトーン・オン・トーンを基調としつつも、植物や花をモチーフに、有機的に曲線を描く刺繍などによって、随所にアクセントを添えた。