コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)の2021-22年秋冬コレクションが、2021年1月26日(火)、東京・南青山にて発表された。
未曾有の事態下における今、“闇に包まれたこの世界で、新しいものを見つけ出さなければならない”と、模索をはじめた川久保玲。すると、意外にもこの闇の中にいてこそ、ポジティブな発見があるのではないかと考えるようになったという。人間の感覚が研ぎ澄まされる暗闇では、小さなことにでも創造や進歩を生み出す可能性をみつけられるのだと。
そんな考えから至った今季、テーマに掲げたのは「DARKROOM」だ。
ショー会場は、まさに「DARKROOM」。ファーストルックが出てくるまでは真っ暗で何も見えない空間だった。そんな中、モデルが登場するたびに、スポットライトが各ルックをふわりと照らし出す。まるでそのピースひとつひとつが、行く先が分からず途方に暮れる中にさす、一筋の光のよう。
暗闇の中で可能性を追い求めるためには、試行錯誤が必要だ。例えば、ジャケットはその創作の過程が顕著に表れている。ライニングの裾丈や袖丈は長めの設定で、新しいレイヤードスタイルへと導く。あるいは、総裏仕立てのジャケットをひっくり返して、表地のはずだったツイードやウールをすべて裏地にシフトさせている。
さらに表地となったライニングのヘムラインは、解放することで柔らかく自由なシルエットを構築した。ジャケットは、本来あり得ない動きがもたらされ、まるでドレスのようなしなやかさを帯びた、新しいアイテムへと転換されている。
また、本来各アイテムがもつ役割は、使う場所を変えるだけで全く異なる役割をもつ。“袖のあるボトムス”だったり、“ヒールのあるヘッドアクセサリー”がその好例だ。こうした通常なら相いれないものたちの繰り返しは、暗闇の中での迷いの現れでもあるのだろうが、全てが創造性を格段に飛躍させている。
暗闇においては、男性らしさ、女性らしさという概念もない。足元には、ナイキ(NIKE)のコラボレーションによる「フォームポジット」スニーカーがある一方で、ヒール付きのメリージェーンが登場している。先述したライニングの遊びには、編み込みやフリンジをヘムラインプラスし、さらに素材をシースルーへと変更することで、一層繊細さを加味した。ボトムスは、スーパータイトなスキニーパンツやキュロットスカートのようなハーフパンツが幾度となく展開されている。
最後に、忘れてはならないのが、NY出身のコンテンポラリーアーティスト、ウィリー・コールとのコラボレーションだ。日用品や廃棄物を改造したり、組み合わせたりして、創造性に富んだ作品を制作する彼の作品は、今季のテーマにしっかりとリンクしている。特に、ヘッドアクセサリーにも足元にも合わせられた“ヒールパンプス”のグラフィックは、主役級の存在感を放っている。