2013年6月26日(水)から渋谷ヒカリエ8F「8/ CUBE 1,2,3」にて「スケッチトラベル®展 アフリカの子どもたちへ図書館を」が開催され、2006年から4年半に渡って行われたスケッチトラベル®プロジェクトで制作された全てのイラストが展示・販売される。
スケッチトラベル®プロジェクトとは、1アーティスト1ページを描いた後に別のアーティストに手渡すという形で、1冊のスケッチブックが12ヶ国総勢71名のアーティストをつないだユニークなプロジェクト。
「トイ・ストーリー3」のアートディレクターなどとしてアニメーションスタジオ「ピクサ―」で活躍中の堤大介と、フランス人アニメーター、ジェラルド・ゲルレのアイデアで2006年に始まった。参加したのは、アニメーション、マンガ、イラスト、絵本など各界の第一線で活躍中のアーティストばかり。
なお、このエキシビジョンで作品を販売した収益は、識字教育を推進する国際NGO「ルーム・トゥ・リード(Room to Read)」を通じて、アフリカに図書室を作る費用に充てられる。作品の購入はオンラインからも可能だ。
6月26日(水)に開かれたオープニングイベントには、堤大介をはじめ、寺田克也、上杉忠弘、丹地陽子、松本大洋、森本晃司が登壇。スケッチトラベル展の発起人である堤大介にプロジェクトのきっかけや、製作の過程について聞いた。
このプロジェクトはどのようなきかっけで始まったのですか。
始めたころは、思いつきの遊びでした。2006年にパリでグループ展をした時に、友達のジェラルド・ゲルレやアーティスト仲間たちと「やっぱり、皆スケッチブックに描くんだね」という話をしていて、仲間内でひとつのスケッチブックを回したら面白いんじゃないかという案から始まりました。
その遊びをチャリティにしたのには何か想いがあったのですか。
僕もジェラルドも遊びも本気でやらないと気が済まない性格です。スケッチブックがつながり、事が段々大きくなっていくうちに、このスケッチブックで誰かが利益を得てはいけないという気持ちになりました。誰かが得してしまうと、ピュアな遊びの心が崩れてしまうので。だから、そのお金を全部チャリティに使おうということに。また、僕らが遊びを仕事のように本気でやりたい人間であるように、チャリティにする以上はチャリティ(団体)についても真剣に考えよう、と思って。 そこでどんなチャリティが僕らのやりたいことに一番フィットしているのかって調べたところ、探し当てたのが「ルーム・トゥ・リード」でした。
堤大介
堤大介さんの絵にはどのような想いが込められているのですか。
僕は最後から3番目に絵を描きました。最初はフランスのナンバーワン絵本作家のグレッグ・コーチレベッカ・ドートゥルメールさんが描いたのですが、彼女が最初からすごい絵を出してきて。そこでスタンダードが決まっちゃいました。そのおかげでレベルの高いアートがどんどん刻まれていって、最後 は本当に触るのも怖いくらいでした。僕はプロジェクトを運営することで手いっぱいで、なかなか描くタイミングが無かったので最後から3番目になりました。そのタイミングで描くことに なったことは後悔してます。プレッシャーがどんどん上がっていったので。その気持ちを素直に表しました。他のアーティストたちの素晴らしい絵をコピーをして、切り取って切り絵にしてモンスターを作って、プレシャーに押しつぶされそうな自分を表現しました。
次のアーティストに渡すときは、必ず手渡しで?
はい、それは手渡しっていうルールだったので。本人が無理であれば、参加しているアーティストが取りに行って渡すとか。自分で手渡しに行った例が多 くあったんですけど、本当に素晴らしい経験になりました。参加アーティストの人たちに実際に会って話をして、ただ単に絵だけではなく、インパーソ ンに繋がれたっていうのが。
宮崎駿さんも堤さん達の想いを受けとったから、引き受けられたんですね。
宮崎駿さんの説得にはスタジオジブリの鈴木プロデューサーに協力してもらいました。鈴木さんの名プロデューサーぶりにスケッチトラベルは助けられました。さすが鈴木さん。鈴木さんなくして、このスケッチブックの完成はあり得なかったですね。
この絵は宮崎監督最新作の『風立ちぬ』のものですよね?
描いていただいた時期が、映画『風立ちぬ』の製作の本当に初めのほうでした。はっきりとお答えはできませんが、観た人が、「あぁなるほど」となってくれればいいなと思います。
宮崎駿
今回、展示販売される作品はどれも、本展の為にそれぞれ1点だけプリントされたオンリーワンのもの。既に売約済みの複製原画も多くある。作家同士の友情と遊び心によって成立した、国境を越えた奇跡の競演。そこから生まれた作品を見に行ってみてはいかが。
【展覧会概要】
スケッチトラベル®展 アフリカの子どもたちに図書室を
期間 : 2013年6月26日(水)~7月7日(日) 会期中無休
時間 : 11:00~20:00
※ 初日6月26日(水)は17:30まで。最終日7月7日(日)は17:00まで。
会場 : 渋谷ヒカリエ8F 「8/CUBE 1,2,3」
入場料 : 無料
URL : http://www.sketchtravel.jp/
【参加アーティスト】
ダニエル・アデル、ピエール・アラリー、クリス・アッペルハンズ、ナタリー・アセンシオス、フレデリック・バック、ドミニク・ベルタイユ、クエンティン・ブレイク、アンドレア・ブラシッチ、アレクサンドラ・ボイガー、ローレライ・ボーブ、ベン・ブッチャー、スコット・キャンベル、エンリコ・カサローサ、カティア・チエン、グレッグ・コーチレベッカ・ドートゥルメール、ニコラ・ド・クレシー、ピーター・デ・セヴ、ロニー・デル・カルメン、ナッシュ・ダニガン、ポール・フェリックス、エンリケ・フェルナンデス、福島敦子、カーター・グッドリッチ、デイヴィッド・ゴードン、エリック・ゴスレ、ルイス・グラネ、フアンホ・ガルニド、ジェラルド・ゲルレ、トマー・ハヌカ、エリ・ハリス、ジョン・ハウ、ジェームス・ジーン、ベロニク・ジョフレ、グレン・キーン、ケラスコエット、マイケル・ナップ、ロバート・コンドウ、ブノワ・ル・ペネック、マイク・リー、イ・サンジュン、ダニエル・ロペス・ムニョス、ドミニク・ルイ、ロバート・マッケンジー、シルベイン・マーク、ニコラ・マーレー、松本大洋、マイク・ミニョーラ、宮崎駿、森本晃司、ピーター・グエン、ヴィンセント・ディ・グエン、カルロス・ニーネ、ジェローム・オペニャ、ル=ホェン・ファム、ビル・プリンプトン、オーレリアン・プレダル、ビル・プリージング、アレックス・パヴィランド、フランソワ・ロカ、ルー・ロマーノ、清水裕子、丹地陽子、寺田克也、エリック・ティーメンス、クロード=ウイリアム・トレビュシアン、堤大介、上杉忠弘、マイリス・ヴァラッド、ロバート・バレー、グレゴワール・ヴィレルモー
■ルーム・トゥ・リードについて
ルーム・トゥ・リードは、開発途上国の子どもの人生を、読み書きの習得と男女平等の教育機会から変えていく国際的な組織(2000年設立。本部、米国)。「子どもの教育が世界を変える」という信念のもと、現地コミュニティ、パートナー組織、政府機関と協働で、図書館・図書室の設置、学校建設、現地語図書の出版、女子教育支援を行っている。現在までにアジア・アフリカ10カ国において 780 万人の子どもを支援し、2015 年までの目標は 1000 万人。日本では、2010年に特定非営利活動法人ルーム・トゥ・リード・ジャパンを設立し、主に啓発活動や資金調達を行っている。
URL : http://japan.roomtoread.org