コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)は2022-23年秋冬コレクションを東京・南青山にて2022年3月8日(火)に発表した。今季のテーマは“BLACK ROSE”だ。
「黒い薔薇のダークな美しさは、私にとって勇気、抵抗、自由を意味する」と話す川久保玲。黒いバラの魅惑的な美しさを単刀直入に落とし込むのではなく、これまでの歴史上、あらゆる意味が込められてきた黒い薔薇に思いを馳せ、“川久保玲が思う黒い薔薇の意味”を表現したのが今季のコレクションだ。音楽にはアイルランドに伝わる歌で、「可憐な黒いバラ」を意味する『ロイシン・ダブ』を選んだが、優しいフルートの音色からなる牧歌的なメロディーもまた、コレクションの深層と絡み合っている。
1つのルックの中には、抵抗と自由、もしくはそれ以上の意味が混在する。コレクションを俯瞰して象徴的に用いられていたのは、極めてクラシックなアウターの組み合わせで、コルセットを彷彿とさせるほどにウエストを絞ったシルエットのジャケットは、大胆にも上下で真っ二つに分断されている。そして分断された内側からは、溢れるほどのボリュームをもった歪なドレスが、自由を求めて顔を覗かせる。
極端なまでにダーツの入った抑制的なシルエットがある一方、解放的なラインがあるのも今季らしさ。ドレスのボリュームに耐え切れずはち切れたかのように、ウエストを強調するジャケットのサイドは露わとなっているが、それは自由と抵抗の中で生まれた新しい構築的なシルエットのようにも感じられる。タコ足のように短冊型のチュールやゼブラ柄が重なったワンルックは、歩を進めるたびに、跳ねるように動き、新しい希望を求める前向きな気持ちを彷彿とさせる。
黒い薔薇とリンクするモノトーンのコレクションには、草木柄やセブラ柄といった象徴的なパターンが採用されている。中でも目を引いたのが通常服には用いられないような資材の存在。アーキテクチュアルな構造の服は、まるでフェルトのような優しさ、資材らしいタフさとインダストリアルな雰囲気をあわせ持ち、黒い薔薇のように様々な意味をもつコレクションへと導いている。