アポクリファ(APOCRYPHA.)の2022年秋冬コレクションが、2022年3月17日(木)に発表された。
今シーズンのテーマは「THE TWILIGHT」。西の空に日が沈み、ほのかに暖かな幻影を残しながら、闇夜が迫る薄明時をコンセプトにしている。コレクションを貫くのは、黄昏時の刹那に感じる、ぼんやりと霞んだおぼろげなムードだ。
「ディテールよりも空気感を感じて欲しかった」と話すデザイナーの播本鈴二は、目の前にいる人の姿さえもあやふやになる彼誰時になぞらえ、明かりを落とした真っ暗な空間の中、ブランドのマスターピースを纏った5つのルックからショーをスタートさせた。続くのは、色の境目が曖昧なニットや、滲むような染色のデニム、光のあたり方によって見え方が変わる玉虫色のコートだ。
カラーパレットは、群青色から茜色へと移り変わるグラデーションで構成。深みのあるネイビーのノーカラージャケットや、淡いオレンジのフーディーなど、コレクション全体で夕暮れ時の空を表現した。
毎シーズン、書物からインスピレーションを得てクリエーションをスタートさせる播本だが、今季は純文学の官能的な描写からイマジネーションを膨らませた。いつもと異なるのは、純文学という外的なエレメントから影響を受けつつも、自身の内面に目を向けたことだ。黄昏時のパーソナルな記憶――恋慕と束縛、嫉妬にも近しいざらりとした感情、異性を想う時の胸のざわつき――を手繰り寄せ、物語を紡いでいる。
ぬらりとした光沢のあるガウンや、素肌の温もりが透けてみえるシースルーシャツは、センシュアルかつミステリアスな印象。ブランドが軸足を置くテーラードは、ハーネスのアクセサリーをレイヤードしつつ、胸元を露わにした艶っぽいスタイリングで提案している。ニットには、「私を忘れないで」という花言葉を持つ儚げな桜を、私的な思い出と共に織り込んだ。