モスキーノ(MOSCHINO) 2023年春夏メンズコレクションが発表された。
着想源となったのは、1988年に33歳の若さで他界した、アーティストのトニー・ヴィラモンテスによる作品。ファッションイラストレーターや写真家など、様々な顔を持っていた彼は、ポップで鮮やかな色彩を得意とし、絶妙なバランスと躍動的な動きが同居するオリジナリティあふれるスタイルで、多くの人を魅了した人物だ。
モスキーノのクリエイティブ ディレクターを務めるジェレミー・スコットも、──言わずもがな、そんな彼の作品に魅了されたうちのひとり。「この素晴らしいクリエイターに光を当てたいと思った」と語るスコットは、今季のコレクションの一部で、ヴィラモンテスの作品とコラボレーションを実現。キャンバスに見立てたピースの上で、作品から引用した抽象的な“顔や人物”のモチーフを、象徴的に用いているのが印象的だ。
まるでカメレオンのように、自由自在に色彩を操ったといわれるヴィラモンテス。コレクションピースの上でも、その大胆な表現方法にモスキーノが呼応し、オレンジやイエロー、ブルーといった鮮やかなカラーラインが、アイテムの枠組みを超えて駆け巡る。ブラックをベースにしたセットアップがその象徴で、アクセサリーを含めたルック全体がアート作品のような、遊び心溢れる表情に仕上げている。
アイテム自体は、ブレザーやスーツ、トップコートといったテーラリングが主役に。ボトムスは、シルエットに遊び心を加える役割をもち、ロングからショート丈までのプリーツスカートやサロン、テパードパンツ、ワイドパンツがより自由なスピリットをプラスする。またスポーツコートにショートパンツやコンバットブーツを合わせるなど、現代的なミックススタイルも提案された。
ランウェイの上では、ヴィラモンテス作品とのコラボレーションにまぎれて、“モスキーノ画伯”も交差する。ジグザクと落書きを加えたような筆致や、手書き風のチェック柄、洋服にできる“シワ”を強調したようなラインまで…。両者に共通していることは、アートもファッションも自由な精神で育まれていること。そしてそこから生まれた制限のない世界は、時代を超えて、これからも人々を魅了し続けていくのだろう。