・一方プライベートでは、磯村さんが“先輩”になる機会も増えたのでは？

増えましたね。でも正直、自分が先輩として振舞うのはなんだか恥ずかしいです。先輩って呼ばれることもありますけど、僕は「おい！飲みに行くぞ！」と呼びかける“兄貴肌タイプ”ではないですし。できることなら、ずっと後輩でいたいと思ってしまいます。

いずれ可愛い弟的な後輩ができたら、僕はどんなふうに接するかな…。今のところ想像もつかないですが、ちょっと楽しみです。

・磯村さんが先輩だったら、しっかり目線を落として話してくれそうです。

ありがとうございます。でも、視線を下げたらナメてる感じになっちゃうかなとか。やっぱり年上らしく引っ張っていく方が、後輩からしたらかっこいいかなとか。“理想の先輩像”については色々と考えすぎてしまいます。

磯村勇斗の俳優業に迫る

中学生の時に自主映画を制作したことがきっかけで、役者を目指したという磯村勇斗。高校時代は地元の劇団に所属し、その後も演技の勉強ができる大学に入学。役者になる夢を叶えるべく、少年時代から努力を重ねてきた。

・学生時代からブレずに俳優の夢を追いかけた、その“熱量”はどこから来るものだったのでしょうか？

「俳優になりたい」という夢をずっと公言していただけあって、有言実行する責任があったんです。自分が目指した景色を見るまでは簡単に諦めちゃだめだと思っていました。自分自身に負けたくないという気持ちが強かったんですよ。

当時はとにかく「俳優という世界を見てみたい！」という一心だったので、不安な気持ちを感じることもありませんでしたね。

・そんな磯村さんは、今や映画やドラマに引っ張りだこの売れっ子俳優。夢を叶えた今、10代の自分に声をかけるとしたらなんと声をかけますか？

そのままでいいよ、と言ってあげたいです。ですがそれと同時に、あなたが思い描いているほどこの世界は甘くない、華やかではない、ということも伝えたいです。

なぜならテレビや映画を支えているのは、想像以上に泥臭い現場だからです。一見華やかに見えますが、その背景には役を作っていく上での大変さだったり、1分のワンシーンを1日かけて撮ったりする苦労がある。絶対的に努力が必要な世界ではあるので、その厳しさも伝えておきたいんです。

・芸能界で活躍できるのはほんの一握り、ということですよね。

はい。だからこそ、今俳優として仕事ができていて、素敵な監督の作品に多く出会えているのは本当にありがたいこと。日々やりがいを感じられて、成長できる場があるということに感謝しています。

・最近は大きな役を貰うことも増えたと思いますが、プレッシャーを感じることはありますか？

今は、特にプレッシャーは感じないです。演技を本格的に始めた当初は、名前付きの役をいただく度に「わぁ、セリフあるな～」なんて緊張したりしていましたけど。(笑) 色々な現場を経験させてもらう中で、自分が撮影の現場にいるということに慣れてきたのだと思います。

・本作の真面目な刑事役をはじめ、ヤクザ、ヒーロー…と、現在は幅広い役柄にも挑戦されています。役作りをする上で大切にしていることはありますか？

脚本・台本を読んで素直にどう感じたか、ファーストインプレッションを大事にしています。そこから、必要であれば技術的な部分を足していく。一度役は作りこんで、固めていきますが、現場では全部忘れてフィーリングで動くようにしていますね。ま、これ以上は企業秘密です。(笑)

・(笑)。私生活でも、役柄に影響されるタイプですか？

自分では認識していないですが、周りからは役に染まっていると言われます。怖い役を演じている時は、プライベートでも「口調が荒いね」と言われたり。きっとその役について考えている中で、知らず知らずのうちに影響されているのだと思います。

・お芝居に“没頭”している証拠ですね。

集中すると抜け出せないんです。現場に行ってお芝居をするときも、自分の周りだけスローモーションになっている感覚がある。時間がひゅんひゅん過ぎて行って、まるでブラックホールの中に入っているような…。

俳優業以外でも、絵を描いたり、資料を作ったりするときは時間を忘れてしまいます。没頭すると、日頃のストレスとか、嫌なこともいつの間にか消えていたりするので、ある種のリフレッシュになっています。

・磯村さんが今一番没頭できることは何ですか？

魚をさばいている時ですかね。自分の中で今一番の没頭タイムです。最近は徐々にさばくのに慣れてきたので、ふぐやウナギなど扱いが難しい魚に挑戦してみたいなと思っています。ふぐをさばくためには毒を取り除く免許が必要なんですが、そこまで極めたい。魚をさばく職人さんの役があれば、ぜひお待ちしています。(笑)

・では最後に、来たる30代に向けての夢や目標があれば教えてください。

特に30ラインを決めているわけではないですが、より“いい年の取り方”をしたいなと思います。いい年の取り方というのは、子供心を持って遊んだり、心を大事にしながら作品に取り組んだりすること。何事にも、楽しむ気持ちを忘れたくないです。

あとは、一緒にいる人たちを大切にして、熱量を持って作品に向き合うこと。この気持ちはずっと持ち続けているものなので、30代に入っても大事にしていきたいです。

【衣装クレジット】
ジャケット 85,800円/パンツ 46,200円 ともにアナーキスト テイラー、カットソー 16,500円 マイン(MYne)、ブーツ 45,100円 ヨーク(YOLK)、その他／スタイリスト私物
問い合わせ先：マイン TEL 070-6660-0692、ヨーク TEL 03-6721-0882

スタイリスト 笠井時夢、ヘアメイク 佐藤友勝

作品情報

映画『異動辞令は音楽隊！』
公開日：2022年8月26日(金)
監督・脚本：内田英治
出演：阿部寛、清野菜名、磯村勇斗、高杉真宙、板橋駿谷、モトーラ世理奈、見上愛、岡部たかし、渋川清彦、酒向芳、六平直政、光石研、倍賞美津子
配給：ギャガ