『金の国 水の国』は、岩本先生のこだわりや世界観がぎゅっと詰まった作品なのですね。
そう思ってもらえると嬉しいですね。大変なことが多い世の中だと思うのですが、きっとこの作品を読んだ後に、よかったなって思ってもらえると思うんですよね。身近な人やこれから出会う人とかに、少しでも優しい気持ちで接したくなるような、そんな作品になっていたら嬉しいです。
そんな『金の国 水の国』が、多くのファンの声をうけて待望のアニメ映画化となりました。ご自身の作品では初となる映像化ですが、どのようなお気持ちですか。
正直全く映画化すると思っていなかったので、お話をいただいた時は純粋にとても嬉しかったですし、こんなにも反響をいただけて本当に光栄です。完成した映画を観たときも、普通のお客さんとして見てしまって、すごく面白かったです(笑)
美しい映像も見どころかと思います。映像ならではのお気に入りのシーンは。
映像の美しさでいうと、<金の国>の煌びやかな世界がバーッと映し出されるシーンや、サーラとナランバヤルの橋の上のシーンとかは、本当にきれいで感動しました。あとお気に入りのシーンでいうと、サーラとナランバヤルが初めて出会うシーンですかね。琴音さんが歌う劇中歌と相まって、すごく印象に残っています。
声優陣もとても豪華でしたね!
本当にそうですよね。実際登場人物を描いているときは、声のイメージとかを考えずに描いていたので、映画を観たときは、ああこんな風になるんだと思って感動したのを覚えています。自分が紙の上に描いたキャラクターたちが、しゃべっている姿を観られるのは嬉しいものですね。
たくさんの豪華クリエイター陣による想いが結集して映画化された『金の国 水の国』。本作をどんな方に見てほしいですか。
もちろん多くの人に観ていただきたいのですが、怖いシーンとかが全くないので、家族連れの方にも見てほしいですね。あとは、現代に疲れているような人とか。きっと見終わったあとに、心が軽くなるようないい気分になって帰ってもらえると思うので、ぜひ劇場で見ていただきたいです!
岩本先生は、2004年にデビューし19年間漫画家として第一線で活躍されています。漫画家を志すようになったきっかけがあればぜひ教えてください。
私はすごく田舎で生まれたのですが、当時娯楽が全くと言っていいほどなくて、東京でやっているようなアニメとかも全然映らなくて。そんななか漫画が唯一の娯楽で、9歳くらいの時に漫画家の水沢めぐみ先生の作品を好きになりました。そこからずっと水沢先生の真似をして絵を描いていて、今思うとそれが漫画家を目指すきっかけになったのかなと思います。
当時はどのような作品を描かれていたのですか。
結構昔のことなのでもうぼやっとしているんですけど、少女漫画のような高校生の絵を描いていた気もするし…でもコマを割って描いていた漫画とかは、ドラクエみたいな世界観のものを描いていたと思います。
当時からファンタジーな作品を描かれていたのですね。
そうですね。ファンタジーは昔から好きです。他にも子供の頃に読んだ赤石路代先生の『アルペンローゼ』とか、萩尾望都先生の『ポーの一族』とか、作品に出てくる西洋風の衣装や建物にすごく惹かれた思い出があります。今の作風にかなり影響を受けていますね。
あとはデビューするかしないかぐらいの時だと思うんですけど、『ゲド戦記』の原作読んで。その世界観がすごい新鮮だったんですよね。文章だけでその世界のイメージがばっと広がっていくというか、こんな作品を作りたいなあと強く思いました。
岩本先生の作品は、ピュアな気持ちを引き出してくれるような、心温まるストーリーが魅力だと思います。ストーリーを作る上で大切にしていることや、テーマにしていることはありますか。
読んだ人が嫌な気持ちにならないっていうのを大前提にしています。読者の方に読んでよかったな、楽しかったなって思ってもらえるように、ハッピーエンドを心がけています。
グロテスクな話とかも見るのは嫌いではないんですけど、私に全く描く適性がなくて、エンタメにできないんですよね。とにかく読んでくれた人の心に嫌な気持が残ってほしくないので、読み終わった後にあたたかい気持ちになれるようなストーリーを意識しています。
最後に、岩本先生がヒット作を次々と描き続けられるモチベーションはどこにあるのでしょうか。
現在主に「月刊flowers」で漫画を描いているのですが、ありがたいことに中学校の時に好きになった先生が周りにたくさんいらっしゃるんです。しかもその先生たちが当時から全然パワーダウンされずにずっと描いているんですよ。それって本当にすごいことだなって思うし、そういった環境にいられることが大きいですね。
だから、私もまだまだ頑張らなきゃって気持ちになりますし、まだまだやれることはたくさんあるなと思います。なのでもちろんこれからも描き続けますし、一人でも多くの人に楽しいと思ってもらえる作品を届けられれば良いなと思っています。
映画『金の国 水の国』
公開日:2023年1月27日(金)
原作:岩本ナオ「金の国 水の国」(小学館フラワーコミックスαスペシャル刊)
声の出演:賀来賢人、浜辺美波、戸田恵子、神谷浩史、茶風林、てらそままさき、銀河万丈、木村昴、丸山壮史、沢城みゆき
監督:渡邉こと乃
脚本:坪田文
音楽:Evan Call
テーマ曲(劇中歌):「優しい予感」「Brand New World」「Love Birds」
Vocal:琴音(ビクターエンタテインメント)
アニメーションプロデューサー:服部優太
キャラクターデザイン:高橋瑞香
美術設定:矢内京子
美術監督:清水友幸
色彩設計:田中花奈実
撮影監督:尾形拓哉
3DCG監督:田中康隆、板井義隆
特殊効果ディレクター:谷口久美子
編集:木村佳史子
音楽プロデューサー:千陽崇之、鈴木優花
音響監督:清水洋史
アニメーションスーパーバイザー:増原光幸
プロデューサー:谷生俊美
アソシエイトプロデューサー:小布施顕介
アニメーション制作:マッドハウス
配給:ワーナー・ブラザース映画