2020年9月18日(金)公開のアニメ映画『思い、思われ、ふり、ふられ』の原作者、少女漫画家・咲坂伊緒にインタビュー。
『ストロボ・エッジ』『アオハライド』『思い、思われ、ふり、ふられ』から成る“青春3部作”をはじめ、多くの少女漫画作品を世に送り出してきた人気漫画家・咲坂伊緒。これまで『ストロボ・エッジ』『アオハライド』が実写映画化されており、今回『思い、思われ、ふり、ふられ』は実写&アニメでW映画化される初の作品となる。
映画『思い、思われ、ふり、ふられ』は、タイプの全く違う4人の高校生の複雑な恋愛を描いた物語。偶然出会ったタイプのまったく異なる女子高生・朱里と由奈、そして朱里の義理の弟・理央と、由奈の幼馴染の和臣。作品では、それぞれの思いが絡み合い、相手を思えば思うほどすれ違っていってしまう4人の切ない恋模様を紡ぎ出す。
今回のインタビューでは、そんな『思い、思われ、ふり、ふられ』の原作に込めた思いやアニメ映画の見どころから、咲坂自身にとっての少女漫画、物語づくりへのこだわりまで幅広く話を伺った。
原作『思い、思われ、ふり、ふられ』を描こうと思ったきっかけを教えて下さい。
価値観が違う人たち同士の物語を描きたいと思ったのがきっかけです。価値観が違う人達同士って反発しがちですよね。お互いがどんな価値観を持っていても本当は良いはずなのに、それに気づかないでいがみ合ってしまう。
だから原作では、“価値観は人それぞれ、色々でいいじゃん”というメッセージも込めて、反対の価値観をお互いに持ちながら、仲の良い関係性を築いている2人の女の子(朱里・由奈)を主人公にしました。そして、彼女たちの恋の相手役として和臣と理央という男の子2人を登場させたイメージですね。
アニメ映画版『思い、思われ、ふり、ふられ』では、理央・和臣も加えた“4人の主人公”で物語が進みます。原作とはまた違う角度で描いていますが、映画を実際に観られた感想は?
主人公の設定は映画仕様になりましたが、原作の登場人物達の魅力をそのまま詰め込んでいてくれことが本当にうれしかったです。
例えば、私しか絶対気付いていないだろうと思っていた、漫画の中のキャラクターの何気ない動作を、アニメーションで細やかに表現してくださっていたり。初めて作品を観た時は、「ここまで読み取っていたのか!」と驚きました。
映像作品ならではの魅力を教えて下さい。
一番の魅力は、原作にはない“色味”が加わった事で作品の世界観がより一層深まった事です。
今回のアニメーション映画では、全体的にカラーがすごく淡くてふんわりしているんですよ。淡い色って、ほわほわしていて可愛い、楽しいといったイメージだと思うのですが、今回は切ないシーンや悲しいシーンにも淡い色が使われています。
敢えて悲しいシーンで、悲しさとは逆のイメージの淡い色を使うことで、キャラクターたちの切なさや悲しい感情が浮き彫りになって強調されているんです。
なので、漫画以上にキャラクターたちの心情が鮮明に観ている人たちに伝えられる“色味”という要素は、映画ならではの魅力なのかなと思います。
『思い、思われ、ふり、ふられ』をはじめ『ストロボエッジ』『アオハライド』など、咲坂さんの作品は中高生にとって恋愛バイブル的な存在ですが、ご自身にとって中高生時代、少女漫画とはどのような存在でしたか。
実はあまり少女漫画をどのような存在であるかを意識して読んだことは無いんです。でも、少女漫画の中の世界が現実にあったらいいなという気持ちで読んではいましたね。
少女漫画の世界は当時の咲坂さんの憧れを描いていたんですね。
そうですね。全体のエピソードやストーリとかよりも一つのシーン、こういう感情になる場面が実際にあったらいいなと思って読んでいました。あと当時は、少女漫画の世界にのめり込んでいる感覚が気持ち良かったですね。なので、少女漫画の中の世界に上手く導いてくれるような作品が好きでした。
具体的な作品の例を教えて頂けますか?
一番最初に漫画って面白いと気付いた作品が、池野恋さんの『ときめきトゥナイト』です。主人公の女の子の恋を応援しながら読むのがすごく楽しかった記憶があります。
それから時間が経って、子供時代以外で読んだものだと、いくえみ綾さんや紡木たくさんの作品には衝撃を受けました。真っ白な画面での魅せ方だったり、時間が止まった場面の演出だったり、表現の仕方が凄いなと思いましたね。