ヨルダン川西岸地区のマサーフェル・ヤッタで生まれ育ったパレスチナ人の青年バーセルは、イスラエル軍の占領が進み、村人たちの家々が壊されていく故郷の様子を幼い頃からカメラに記録し、世界に発信していた。そんな彼のもとにイスラエル人ジャーナリスト、ユヴァルが訪れる。非人道的で暴力的な自国政府の行いに心を痛めていた彼は、バーセルの活動に協力しようと、危険を冒してこの村にやってきたのだった。同じ想いで行動を共にし、少しずつ互いの境遇や気持ちを語り合ううちに、同じ年齢である2人の間には思いがけず友情が芽生えていく。しかしその間にも、軍の破壊行為は過激さを増し、彼らがカメラに収める映像にも、徐々に痛ましい犠牲者の姿が増えていくのだった。
映画『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』は、ヨルダン川西岸のパレスチナ人居住地区「マサーフェル・ヤッタ」の住民たちが力を合わせ20年以上占領に抗い続けてきた歴史に触れつつ、イスラエル軍がパレスチナ人に対して長年行ってきた占領政策の本質と実態に迫っていくドキュメンタリー。
「マサーフェル・ヤッタ」の現状をカメラに収め世界に発信することで、占領を終結させ故郷の村を守ろうとするパレスチナ人の青年バーセル・アドラーと、彼に協力するイスラエル人青年ユヴァル・アブラハームの2人による決死の活動を、2023年10月までの4年間に渡り記録し映像に収めている。作中では不条理な占領行為を間近に映像化。また、バーセルとユヴァルが、パレスチナ人とイスラエル人という立場を越えて対話を重ね理解し合う様子や、故郷の自由を願って立ち向かい続ける人々の姿も記録されている。
監督は、パレスチナとイスラエルの若き映像作家兼活動家である4人。バーセル・アドラー、ユヴァル・アブラハーム、ハムダーン・バラール、ラヘル・ショールが共同で監督を務めている。