金沢21世紀美術館では、「コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき」を、2023年4月8日(土)から11月5日(日)まで開催する。
形と精神の関係は、古来より芸術作品を通して探究されてきた。そうしたなか、精神や生命が生みだす「エコロジー」を問い続けたグレゴリー・ベイトソンは、形と形の関係や、それぞれのパターンを繋ぐネットワークとして「精神(Mind)」を提唱している。自然、社会、言葉、あるいは夢といった多様な形のパターンや構造は、物事の関係性が織りなすネットワークの一部をなすものであり、人びとが世界を認識し、解釈する基底となる。
「コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき」は、自然界や人間社会に存在する形のパターンやそれらの関係性に着目し、地球上のエコロジーを機能させるネットワークとしての「精神」を、美術を通してひもとく展覧会だ。1960年代から現在に至る金沢21世紀美術館の所蔵作品に加えて、招へい作家の作品も展示し、形と精神の関係に光をあててゆく。
本展ではまず、ブラジル出身の作家リジア・クラークによる「動物」シリーズを紹介。これは、アルミニウムの板を蝶番で組み合わせ、それらを自由に動かすことで無数の形を生みだすことができる作品だ。他者との関係性や創造力によって有機的に姿を変える同作は、参加型で民主的な芸術の創造を目指してブラジルで生まれた金字塔的な作品として位置付けられている。
形とは、可視的なものにかぎらず、メッセージや情報を伝達するパターンをも含む。会場では、意味の関係性を取り上げ、言葉に基づく作品を手がけるジョセフ・コスースを紹介。ジークムント・フロイトの著作にある言葉をネオン管で表した《北極グマとトラは一緒に戦うことはできない。》は、本の中で使われていた意味と、鑑賞者が作品から受け取る意味の間に、さまざまな関係性を喚起するものであるといえる。
幽霊は、死者の現れであるばかりでなく、時間を自在に行き来する神話的な存在として、あるいは生者と深く関わる精神的な存在としても捉えられる。本展では、こうした「幽霊」的な形を表現する作品に着目。ガラスの重みによって腐敗したカーネーションの花液が、画仙紙に滲み出る様子を捉えた中川幸夫《聖なる書》や、衣服を解体した両裾に文様を縫いとり、失われた身体を想起させる沖潤子の作品などを紹介する。
熱や重力は、物理的な世界を形成する基本的な力学要素であり、パターンや構造を形成するうえで重要な役割を担う。すなわち、熱は生物と環境の間でつねに交換される一方、重力は質量を有する物体すべてに影響を及ぼす。本展では、熱や重力といった自然法則から生まれる形に着目し、招へい作家の田中里姫のガラス工芸作品や、コレクション作品のヴラディーミル・ズビニオヴスキー《石の精神》を展示する。
コレクション展1 それは知っている:形が精神になるとき
会期:2023年4月8日(土)〜11月5日(日)
会場:金沢21世紀美術館 展示室1〜6
住所:石川県金沢市広坂1-2-1
開場時間:10:00〜18:00(金・土曜日は20:00まで)
※観覧券販売はいずれも閉場30分前まで
休場日:月曜日(7月17日(月・祝)、9月18日(月・祝)、10月9日(月・祝)・30日(月)は開場)、 5月14日(日)、7月18日(火)、9月19日(火)、10月10日(火)・31日(火)
観覧料:一般 450円(360円)、大学生 310円(240円)、小学・中学・高校生 無料、65歳以上 360円
※( )内は20名以上の団体料金
※美術奨励の日(会期中の毎月第2土曜日)および市民美術の日(11月3日(金・祝))は、金沢市民は本展を無料で観覧可(証明書を提示のこと)
■出品予定作家
青木克世、リジア・クラーク、フェデリコ・エレロ、樫木知子、川内倫子、小西紀行、ジョセフ・コスース、イ・ブル、松田将英(招へい作家)、中川幸夫、沖潤子、トニー・アウスラー、ペドロ・レイエス、田中里姫(招へい作家)、ヴラディーミル・ズビニオヴスキー
【問い合わせ先】
金沢21世紀美術館
TEL:076-220-2800