ディオール(DIOR)の2024年春夏メンズコレクションが、2023年6月23日(金)、フランス・パリにて発表された。
キム・ジョーンズがディオールのメンズ アーティスティック ディレクターに就いてから、5年目を迎える2023年。メゾンが培ってきたウィメンズウェアのエッセンスを継承しつつ、それらをメンズウェアへと昇華することで、柔らかな洗練、軽快な華やぎを湛えたコレクションを披露した。
今季の着想源のひとつが、ムッシュ ディオール亡きあと、弱冠21歳でメゾンのデザイナーに抜擢されたイヴ・サン=ローランだ。2023年秋冬メンズコレクションに続いてサン=ローランのテーラリングの要素を反映し、そのボリューム、スリットやプリーツといったディテールを取り入れている。
たとえばテーラードジャケットは、ショルダーは端正なセットインに設定し、過度なシェイプを施さない抜け感のあるシルエット。ラペルは小さめに設定するとともに、外側に向かって柔らかな曲線を描くというように、エレガントさとカジュアルさ、端正さと柔らかさが調和した、心地よい和音を響かせている。
このような、相反する要素が調和する心地よい均衡は、装飾や素材にも見てとることができる。ブルゾンやシャツといったメンズのベーシックなウェアには、ビジューの装飾を散りばめて。あるいは、端正に仕立てたテーラードジャケットなどにはファンシーツイードを用いるなど、ウィメンズの装いで育まれてきた華やぎを取り入れた。
これは、メゾンを象徴するモチーフのひとつ「カナージュ」にもいえるだろう。ややドロップショルダー気味に仕上げたロングコート、ジャケットのインナーとして挟んだクルーネックニット、涼やかにハーフパンツと組み合わせたノースリーブなどに、その例を見ることができる。
カラーは、洗練と華やぎ、フォーマルとカジュアルを架橋すべく、穏やかさと鮮やかさが共存している。ブラックやグレー、ベージュ、エクリュといった落ち着いたカラーが、エレガンスとリラクシングの溶けあうウェアの軸をなす一方、ヴィヴィッドなイエローやライム、ブルーといったネオンカラーが、ストリートのアクセントを挟んでいる。