プラダ(PRADA)の2024年秋冬メンズコレクションが、2024年1月14日(日)、イタリアのミラノにて発表された。
よく言われることではあるが、ヨーロッパの人々は、一見無秩序と思われる自然を、そこに何かしらの法則性や関係性を見いだすことで捉えてきた。こうして生まれたのが、数や形の関係を探る算術や幾何、音と音の関係から調和を引き出す音楽、そしてものごとをデジタルに捉えるコンピューターなどだ。いわば、「グリッド」を通して自然を眺めることで、そこに秩序を与えることだといえる。
こんなことを思い出したのは、今季のプラダのショー会場が、自然から関係への跳躍を彷彿とさせるからにほかならない──足元には、正方形のグリッドに支えられた透明な床が広がり、その下には植物が随所に生えるさまが見てとれる。そしてシートには、パソコンとセットで使うことだろうオフィスチェアが並べられるのだ。
衣服もまた、身体という自然を、人間の関わり合い=関係性へとつなぐという意味で、こうした「グリッド」の例だといえる。そして今季のプラダは、衣服の端正な「グリッド」に寄り添いつつ、それを破る力強さを示しているように思える。その例が、フォーマルの代表格であるテーラリングだ。ジャケットはシングルブレストを軸に、シルエットは横幅を広めに設定したボクシーなライン。首回りは大ぶりに設定したノッチドラペルを採用することで、シャープさを抑えた力強い佇まいが生まれている。
均整を破る力強さは、数多くのミリタリー系アウターによく見られる。たとえば、MA-1ジャケットなどは、ショルダーからスリーブ、ボディにいたるまで、大胆なオーバーサイズに。また、トレンチコートは首回りを高く、全体は直線的なラインを描くよう仕上げることで、縦のラインを引き立てた。
素材においても、なめらかな均整を内側から破る、力強いテクスチャーが随所に見られる。オーバーサイズのコートやアンクル丈のスラックスには、質感に富んだツイード素材を。あるいは、ブルゾンなどに用いたレザーは、シャープで洗練されたものである以上に、しっかりとした厚みと確かな手触りを感じさせるものだ。
カラーは、テーラリングに呼応する抑制されたトーンのグレーやダークネイビーを中心に採用。そうしたなか、クレリックシャツにはベージュやライトグレーといったペールトーンカラーを、ニットやスリムなパンツには鮮やかなグリーンやレッド、パープルなどを、あるいはタイにはブラウンやグリーンといった自然の彩りを取り入れることで、力強い彩りをもたらした。