ロエベ(LOEWE)の2025年春夏メンズコレクションが、2024年6月22日(土)、フランスのパリにて発表された。
今季のロエベは、あくまでシンプルなテーラリングやカジュアルなウェアを通して、シルエットと素材のニュアンスの豊かな可能性を探っているように思われる。たとえば、テーラードジャケットを見るならば、ベーシックなシングルブレストとノッチドラペルを採用し、シルエットはすっきりとした佇まいに。洗練された佇まいをベースにしつつも、ラペルの重心を低く設定して抜け感をもたらしたり、スリーブに量感を持たせるなどして、絶妙なニュアンスを加えている。
テーラリングが基本的にすっきりと仕上げられているのに対し、素材の多彩な質感とあいまって豊かなボリュームを引き出す例もある。袴のようにダイナミックなシルエットのワイドパンツは、ケーブルニットを採用することで柔らかな動きを見せる。あるいは、ドロップショルダーのロングコートには、艶やかに光沢を帯びたレザーを採用し、そのハリでもってオーバーなサイズ感を際立てた。
このように、素材とシルエットが互いに呼応するようにして、豊かなフォルムを作りだす。端正なセットインショルダーで仕立てられたチェスターコートは、ハリを持つ素材を採用し、洗練された縦のラインの構築性をいっそう強調しているといえるだろう。また、ケープのようなレザージャケットは、裾にかけて広がるシルエットが、レザーの質感でより立体的に浮かび上がらせられている。
素材そのものの質感も豊かだ。総柄のシャツには、ふわりとした印象のフェザーが用いられている。また、ノースリーブのトップスに用いた材マザーオブパール、トップスを構築する細かなパーツなど、メタリックなきらめきを随所に見て取ることができる。
シルエットや素材の豊かさとともに、ディテールにおいてもベーシックなウェアの印象に異化作用がもたらされる。レザーライダースジャケットはスクエアネックにアレンジし、驚くほどに軽快な雰囲気を獲得している。あるいはトレンチコートは、首周りのディテールをそのままフロントに延長することで、その印象に大きく変化を加えているといえるだろう。