菅田さんは、以前『銀魂』のインタビューで日本と海外の映画の見方の違いを話されていました。日本と海外の映画業界の違いについて、どう感じていますか？

菅田：それは『共喰い』について話した時のことですね。当時考えていたことは今も同じで日本と海外で受け取り方に違いがあると思います。日本の場合、暗くて重いテーマだと、そこばかり見られてしまう1種の寂しさがある。海外で上映すると、もちろん苦しい部分は共感してくださるけど、 面白いシーンは大いに笑ってくださって…そういう素直な反応を見ると、“映画と人との距離”がもっと近くなればいいなと思います。

日本だとどうしてもシリアスに捉えがちですよね。菅田さんが考える“映画と人との距離”とは？

菅田：表現が難しいのですが…自分もフラットな気持ちで映画を見たいと感じました。どうしたって、この俳優出てるんだなとか、この人こういうキャラクターだよなとか、見ている間に知っている情報がよぎっちゃって、もったいないって思うことが多々あるんですよ。特に今は、SNSも含め素性も出やすいので…そこをうまく切り離して見てくれる方もいるし、切り離させるのも俳優の仕事だったりもするんですけど。もうちょっとフラットになってもいいんじゃない？って感じる瞬間はあります。

最後になりますが、お2人が思う“映画制作の魅力”とは何でしょう？

菅田：僕は俳優という目線になりますが、演じる面白さで言えば、 お芝居ってどこか修行みたいなもの。いろんな人の人生を追体験することによって、自分の身になるものがたくさんあるし、感情のコントロールにもなるし、 そして演じたものが作品として芸術にもなるという、“一石何鳥”もある仕事だと思っています。

黒沢：全員で力を合わせて、1つの作品を作り上げることです。僕はただ交通整理しているだけなのですが、うま～く整理すると、スタッフや俳優が思わぬ力を出してくれて、僕の考えをはるかに上回るようなものが出来上がってくる。その瞬間が最大の喜びですね。

俳優やスタッフの力以外にも、天候などのラッキーな偶然に出会えることも魅力ですね。たとえば『Cloudクラウド』でも、山場ともいえるシーンで、たまたま雪が降ってきたんです。偶然の瞬間をカメラで捉えることができて、誰も想像し得なかった映像が出来上がることがあることも、映画作りの楽しさだと感じています。

“想像を超える何か”を追い求めているからこそ、メガホンを取り続けているのでしょうか？

黒沢：そうですね。本当に僕の力なんて部分的なので、うまい組み合わせと偶然さえあれば、どんな映画ができるのか分からないのが面白い。どんなに歳を取ろうが、若かろうが、“とてつもない傑作を撮ってしまうかもしれない”映画の可能性に魅せられているから、今後も撮り続けると思います。

【作品詳細】
映画『Cloud クラウド』
公開日：2024年9月27⽇(⾦)
監督・脚本︓⿊沢清
出演：菅⽥将暉、古川琴⾳、奥平⼤兼、岡⼭天⾳、荒川良々、窪⽥正孝、赤堀雅秋、吉岡睦雄、三河悠冴、山田真歩、矢柴俊博、森下能幸、千葉哲也、松重豊

＜撮影クレジット＞
ヘアメイク：AZUMA(M-rep by MONDO artist-group)
スタイリスト：KEITA IZUKA