企画展「没後30年 木下佳通代」が、埼玉県立近代美術館にて、2024年10月12日(土)から2025年1月13日(月・祝)まで開催される。大阪中之島美術館でも開催された巡回展だ。
木下佳通代(きのした かずよ)は、兵庫に生まれ、1960〜90年代にかけて関西を拠点に活動した美術家だ。油彩画に始まり、制作を通して「存在」への思索を深めた木下は、1970年代より写真作品の制作に着手し、「視覚」や「認識」と物事の関係を追究。1980年代に入ると油彩画を中心に手がけるようになり、問題意識をいっそう発展させるも、1994年にこの世を去った。
企画展「没後30年 木下佳通代」は、さまざまな作風を通して「存在とは何か」という問いに向きあい続けた、木下の全貌に迫る回顧展。初期の油彩画から1970年代の写真作品、1980年代以降の絵画作品、そして絶筆まで、代表作をはじめとする約120点の作品を一堂に集めて紹介する。
1939年兵庫に生まれた木下は、関西の前衛美術集団・グループ〈位〉に影響を受けつつ、油彩画の制作を通して「存在」に対する関心を深めていった。たとえば、パウル・クレーの抽象絵画に影響を受け、植物のような形態が伸びる初期の作品には、地球上における「存在」に対する問いがあったという。本展の序盤では、植物をモチーフとする初期作や「境界の思考」シリーズなどの絵画作品を中心に展示する。
木下は1970年代、写真作品の制作を行うようになる。「存在」を確かめるものとして「視覚」や「認識」に関心を抱いていた木下にとって、対象を客観的に捉える写真は適した表現媒体であった。さらに1976年には、幾何学的な図形を写した写真に、同じ形を描き重ねる作品へと展開。たとえば《'76-C》では、コンパスで円を描く様子が写されているものの、角度をつけて撮影されているため、画面上には楕円として現れている。しかしそれでも、人々はそこに描かれているのは円だと認識するというように、ここでも「視覚」と「認識」の関係が探られているのだ。会場では、1970年代のこうした写真作品などを紹介する。
システマティックで禁欲的な写真作品の制作に抑圧を感じるようになった木下は、1980年代、その制作の軸足を絵画へと移していった。こうしたなか、存在の概念を表現に取り入れるのではなく、存在そのものを画面に作りだせばよいのだと考えるようになり、油彩画の新たな展開を示してゆくことになる。こうして、絵具をカンヴァスに塗りこめ、布で拭きとったり、限られたストロークで緊張感ある画面を生みだしだりと、作風を変化させつつ絵画表現を推し進めていった。本展の終盤では、《'86-CA358》や《'91-CA652》など、後半期の絵画作品を目にすることができる。
企画展「没後30年 木下佳通代」
会期:2024年10月12日(土)〜2025年1月13日(月・祝) 会期中に一部作品の展示替えあり
会場:埼玉県立近代美術館
住所:埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
開館時間:10:00~17:30(展示室への入場は17:00まで)
休館日:月曜日(10月14日(月・祝)、11月4日(月・振)、1月13日(月・祝)は開館、12月27日(金)〜1月3日(金)
観覧料:一般 1,000円(800円)、高校・大学生 800円(640円)
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下、障害者手帳の提示者(付添者1名含む)は無料
※企画展観覧券(ぐるっとパスのぞく)の所持者は、あわせて「MOMASコレクション」(1階展示室)も観覧可
【問い合わせ先】
埼玉県立近代美術館
TEL:048-824-0111