ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)の2018年春夏ウィメンズコレクションが、パリ・ファッション・ウィーク4日目の2017年9月29日(金)に発表された。雨降りしきる夜のパリ。日中は強い日が差し、ここ数日に比べて暑さが際立つ気候であったのに、ヨウジヤマモトのショー前に、滝のような豪雨が降った。
ショーが始まると、そんな”過酷な環境”が嘘みたいに穏やか。響き渡るギターの音色、モデルのゆっくりとしたウォーキング。そして、プリーツ、ドレープ、ギャザーなどを集め立体美を追求した”足し算”の昨シーズンとは変わり、今季は引き算の美学。慎ましく控えめ、これが第一印象だった。
おそらく、今季のキーワードは切断だろう。山本耀司が仕立てたテーラード、コートは、その美しい完成体を惜しげもなく、縦横無尽にカットアウト。トレンチコートは、ボディからアームが離れて肘の辺りまで落ち、テーラードコートは本来お腹のあたりにあるはずの中央ボダンがアームへ。バックスタイルはどれも斜めにカットアウトされ、カーゴパンツのサイドポケットはひどく下に落ち、ひざ下の位置に。
どのパーツも本来の位置にはないのに、洋服の美しい形を保てている。技術だ。バラバラになった生地はボタンで繋ぎ留め、そのボタンもきちんと上から下まで止めることなく、ずれていたり抜けていたり。足りない部分はあて布のように1枚布をアタッチ。これらが集まると、観る者の予想だにしていない膨らみやドレープ、フレアなシルエットなどが生まれ、女性らしいフォルムが作られていく。
後半に続くにつれ、このカットアウトは潔さを増し、洋服は綺麗に半分こ。サロペットもドレスも全部中央で真っ二つになっていて、ボタンや金具で絶妙に止められている。
そこで流れる音楽は「俺を置いて消えていく、辛いことがあったんだね、キレイだよ君の背中」というナンバー。過去の恋人を想うのか、甘く切ないメロディーにぱっくり背中が真っ二つになったドレスがのる。
よく見ると背中には、ロゴシールのようなものが付いていて、全ての文字は読み取れなかったが「LOVE」といった文字があったのは確かだった。切断というクリエーション手法には似つかわしくないが、今季は愛に溢れた創作であったのかな…と妄想が膨らんだ。