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小説『ペンギン・ハイウェイ』映画化、原作者・森見登美彦にインタビュー"少年時代の妄想を共有したい"

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小説『ペンギン・ハイウェイ』がアニメーション映画化。2018年8月17日(金)より全国の映画館で公開される。

『ペンギン・ハイウェイ』は、まっすぐな目で未来を見つめる少し生意気な小学4年生"アオヤマ君"のひと夏の少し不思議な体験を描くSF作品。

『ペンギン・ハイウェイ』あらすじ

インタビュー|写真1

小学4年生のアオヤマ君は、1日1日、世界について学び、学んだことをノートに記録する。毎日努力を怠らず勉強するので、「将来は偉い人間になるだろう」と思っている。そんなアオヤマ君にとって何より興味深いのは歯科医院の“お姉さん”。気さくで胸が大きくて、自由奔放でミステリアスなお姉さんをめぐる研究も、真面目に続けていた。

ある日、アオヤマ君の住む郊外の街に突如ペンギンが現れ、そして消えた。さらにアオヤマ君は、お姉さんがふいに投げたコーラの缶がペンギンに変身するのを目撃する。「この謎を解いてごらん。どうだ、君にはできるか?」

一方、アオヤマ君は、クラスメイトのハマモトさんから森の奥にある草原に浮かんだ透明の大きな球体の存在を教えられる。やがてアオヤマ君は、その謎の球体“海”とペンギン、そしてお姉さんには何かつながりがあるのではないかと考えはじめる。

そんな折、お姉さんの体調に異変が起こり、同時に街は異常現象に見舞われる。果たして、お姉さんとペンギン、“海”の謎は解けるのか――!?

『夜は短し歩けよ乙女』の森見登美彦による小説が原作

作家・森見登美彦が2010年に発表し、日本SF大賞受賞を受賞したペンギン・ハイウェイを映画化したもの。森見はデビュー作『太陽の塔』で日本ファンタジーノベル大賞を受賞。代表作に『夜は短し歩けよ乙女』などがある。

原作者・森見登美彦にインタビュー

映画の公開に先立ち、原作者の森見登美彦に、小説「ペンギン・ハイウェイ」が生まれた背景や映画化に対する想いについて、話を聞くことができた。

小説「ペンギン・ハイウェイ」はどのようにして生まれたのでしょうか?

自分自身が小・中学生の時に、探検していた郊外の街や妄想していた世界を小説にしたいと思ったのがはじまりです。

幼少期は奈良の郊外に住んでいたので、郊外を舞台にした物語を書きたいと小説を書き始めた当初から思っていたんです。しかし、そういう街を書くのはなかなか難しく。書けないまま、京都を舞台にした「腐れ大学生小説」を連発しているうちに、京都の作家みたいになってしまいました。

そうやって色々と書いているうちに、だんだんとこまかい技術が揃ってきて、以前書けなかったものを描けるようになったんじゃないか、と思い、このタイミングで書き上げました。

インタビュー|写真2

長い間温めてきた、特別な作品なのですね。

はい。他と比べても別格です。自分がいろいろなものに染まる前に見た景色を描いている、自分の原点に密着した個人的な物語なので、他の作品と比べても特別なものです。温めている期間が長いというのはもちろんですが、とても愛着のある作品です。

読者に「ペンギン・ハイウェイ」を通じて感じて欲しいことは何ですか?

自分が少年時代に抱いていた不思議な感覚。もしかしたらこの住宅街の先を進んでいったら、何かが起こるのでは…という感覚を、読者の人にも体験してもらいたかった。これは「ペンギン・ハイウェイ」に限った話ではないのですが、僕が小説を書く時は共有したい時なんです。

インタビュー|写真8

「共有」とはどのような意味ですか?

たとえば、サッカーが趣味の人は、ワールドカップなどの機会に集まって、皆で盛り上がることができるでしょう。僕にはそういう趣味が無いんです。妄想することは好きだけど、「住宅地にペンギンが突然出てきたら面白いよね?」と他人に言っても、普通は共感してもらえない。

でも、頭の中にある妄想をいっぱいかき集めて、ストーリーとして組み立てて小説にすると、共有できるようになる。趣味の無い自分が、小説を通じて初めて、他の人と世界を共有することができる。これが、僕が小説を書く目的でもあります。

他の人と妄想を共有するために小説を書いているのですね。

はい。もともと何か教訓めいたメッセージを伝えたいと思って小説を書いている人間ではないので。小説家として長くやっていると、世の中で問題視されている社会的課題を取り上げなくてはいけないのではないか、などと難しく考え込んでしまうことがあるのですが、結局のところ書きたいものしか書けない。「ペンギン・ハイウェイ」では、それが少年時代の思い出だったというわけです。

インタビュー|写真4

少年時代の思い出から着想を得たものは具体的に何でしょうか?

たとえば自動販売機や缶ジュース、アオヤマ君と父親がドライブに出かけるシーンなどです。僕も父親も方向音痴で、当時はiPhoneもカーナビもなかったので、よく道に迷って。そんな時にこの道の先には何があるんだろうということをよく考えていました。

ある日道に迷ってたどり着いた先は、自動販売機がぽつんと1つだけある場所で。そこで2人で缶ジュースを飲んで休憩して、どうやったら家に戻れるんだろうと悩んでいたら路線バスを見つけ、そのバスにくっついて無事に戻って来れたことがありました(笑)。もちろんそっくりそのままではないけれども、物語に登場するあらゆるものが自身の少年時代からきています。

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